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第3回くらしとバイオプラザ21談話会報告

 6月27日第3回談話会が開催されました。今回は海外から見た日本に目を向け、浜本哲郎さん(米国大使館農務スペシャリスト)と石井みな子さん(潟pーティーフー社長)をスピーカーにお迎えし、お話をうかがい、その後、参加者14名を得てディスカッションを行いました。
 浜本さんには日米の農業の現状のお話、石井さんには砂糖、組換え農作物に関する分かりやすいパンフレット作成のご経験から世界の中の日本の立場を浮き彫りにしていただく予定でしたが、おふたりのお話は日米の調整を通じて見えるコミュニケーションの特徴、砂糖への理解促進活動を通じて見えた女性を中心にしたコミュニケーションの作り方や広げ方へと発展し、タイトル「世界の中の日本」とは少し離れたものになりました。しかし、くらしとバイオプラザ21が学ぶべきヒントを多く示していただくことができ、大変有意義な談話会となりました。


浜本さんのお話「異文化コミュニケーション」

浜本さんのお話
浜本さんのお話

 米国大使館で日米の調整作業にかかわっていますが、文化や考え方には、当然、両国の間に距離があります。敢えて誤解を恐れずに、それを伝えることで、日米に限らず、異文化コミュニケーションのむずかしさとそれをどのように克服していけばよいのかについて、これからの参考にしていただきたいと思います。

現実的な問題

 スターリンク(※)を含めて日本は米国に対して組み換え作物の完璧な分別流通を求めていますが、実際に米国内での流通システムはそのような完璧な分別を前提としていません。米国でのトウモロコシやダイズの流通システムを、日本の希望どおりにその混在を完璧になくすために変えることは莫大なコストがかかりますが、スターリンクの場合には、存在する人間や環境へのリスクと分別にかかるコストに基づいて判断を行い、現実的に不必要であると結論します。しかし、日本としては、どうして「やれる限りの努力をする」と言えないのだろうと考えてしまいます。このように、日本の国民性としてはたとえ実現しなくても完璧を目指す傾向がありますから、科学的に実現可能な適切なレベルを示す米国の姿勢を誠実なものと受け入れにくくなります。

リスクマネージメントの問題

 リスクを「危険の発生する確率など考慮した危険度」として分析することは自然科学的な作業ですが、その科学的分析結果に基づいてリスクを管理するリスクマネージメント手法の決定には社会的・心理的、主観的な要素が加わり、科学だけは判断することはできません。リスクの受け入れ方やリスクマネージメント手法は、異なる社会の中では、当然異なってくるので、求められる安全のレベルにおけるハーモニゼーション(国際協調)は難しいのかもしれません。

マスメディアトレーニング

 マスコミの影響力が大きいのは米国も同じで、米国の政府機関の報道官や、一般企業の広報担当者はその対応を最大限適切に行うため、マスメディアトレーニングを受け、彼らはマスコミ対応をプロとして一手に引き受けます。マスコミから質問される場面を想定して練習が行われたり、テレビ映りのよい姿勢を覚えたりなどします。
 これからのバイオを考えるとき、日本ができること、科学ができることは何でしょうか。

  1. 議論の場を準備しておくこと
  2. 話すことよりも聴くことが重要
  3. メディアへの対応の重要性
  4. 科学技術や科学のペリフェラル(啓蒙活動)は何ができるのか
 以上4つだと思います。私自身は生物学をわかりやすく伝えるホームページ運営や著作、講演活動を通じてペリフェラルを行っていきたいと思います。

 生物学が嫌いなんて言わせない!!

※2000年、日本国内で食品・飼料ともに未承認(米国では飼料のみに承認されていた)であった遺伝子組換えトウモロコシ「スターリンク」が米国から輸入されたタコシェル、トモロコシ粉などの加工食品などの中に見つかり、メーカーは回収した。

石井さんのお話「お砂糖を通してみる世界、広がるコミュニケーション」

石井さんのお話
石井さんのお話

 砂糖はダイエットの敵、糖尿病の原因と見られがちですが、これらの誤解を解くことを目的につくられた「砂糖を科学する会」の広報事業を受託して6年になります。砂糖に関するパンフレットを作ったり、メディアを利用したり、セミナーを開いてきました。女性のネットワークを利用して組織されたシュガーライフクラブは、今年4年目で全国1500名のメンバーを持つまでに発展しました。


 砂糖を科学する会

 幼稚園児を対象とした「おさとうの絵本」も作成しました。世界中から日本の少年ケンタ君の提唱で「お砂糖サミット」が開かれ、世界中のこどもが参加し、ことばを交わし、沖縄のサトウキビ畑や北海道のサトウダイコン畑、砂糖工場を見学し、砂糖が植物から作られていること、「食」はいろいろな人たちのお陰で自分たちのもとに届けられていることを学ぶというストーリーです。この中に登場する人名、お菓子は世界各地の女性スタッフや協力者の情報をもとに人気のあるトレンドなものを選びました。各ページは飛び出したり、塗り絵をしたり、シールをはるなど、楽しい仕掛けがあって作業ができるようになっています。絵本を読み聞かせるお母さんのための手引書もついており、母親もメッセージを伝える対象の大きな部分を占めています。
 情報を提供するときには、よいことも悪いことも伝えた上で、だから悪いところをなおしましょう、というのが大切だと思います。砂糖でしたら、食べすぎは肥満の原因になるし、歯磨きをしなければ虫歯になるので、気をつける方法も一緒に伝えます。また「おしゃれ」は感性の表現ですから、がっちりした理念の上におしゃれな見せ方も必要です。バイオテクノロジーの情報伝達でもバイオの入門者を増やすこと!興味を持ってもらうこと!心から心に伝えることを心がけるとよいと思います。

 参加者を交えた主な質疑応答と感想は次のようになりました。
  • 砂糖の自給率はどのくらいですか?
    回答:18%。オーストラリアなどからサトウキビを輸入しています。砂糖の消費が減ると北海道のサトウダイコンや沖縄のサトウキビのような農業が縮小するかもしれません。

  • 砂糖は「脳の栄養」だというのは本当ですか?
    回答:瞬間エネルギーです。

  • 絵本の配り方はどうしたのですか?
    回答:民間保育園を中心に。10万部作ってほぼ配布。

  • 製作物の反響はどうですか?
    回答:保育園の先生と通じてこどもの反応をうかがったり、お母さんたちから添付した葉書が多く届きました。

  • バイオについても地道な理解促進が有効。

  • 日本では禁止されている甘味料のチクロ(サイクラミン酸)も欧米では問題なしで、むしろ糖尿病患者は利用している。石油蛋白、ジャガイモの放射線による芽止めなど感覚的に消費者に嫌われて公式に禁止されているものが日本にはあります。

  • 高校生には砂糖はダイエットの敵より朝食抜きの問題の方が大きいようです。

  • 米国では朝からドーナッツを食べる食習慣は、砂糖は頭の栄養だというとそんなに間違っていないのですか。
    回答:ダイエットによくないのはドーナッツの油という説もあります。

  • 地道な広報活動の効果もあって砂糖の悪口はいわれなくなってきているようです。

  • バイオの場合、たんぱく質は食べてしまえばアミノ酸に分解してしまうことを、まず2-3年言い続けるのがいいのではないでしょうか。

  • 主婦に受ける戦略をとる。女性のパワーは大きいことを意識。

  • マスメディアトレーニングを含めて、マスメディア対策やマスコミへの見え方を意識することが必要ではないでしょうか。


談話会の参加者のみなさん
談話会の参加者のみなさん






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