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コンシューマーズカフェ「健康食品の問題点と今後のあり方」

2011年2月25日(金)、くすりの適正使用協議会会議室にて、標記カフェを開きました。
(独)国民生活センター商品テスト部調査役宗林さおりさんによる「健康食品の問題点と今後のあり方」という話題提供の後、参加者は3つのグループに分かれて話し合いをしました。

宗林さおりさん くらしとバイオプラザ21より開会のあいさつ

お話の主な内容

1.特定保健用食品「トクホ」について


1)トクホについて
特定保健用食品は「トクホ」と呼ばれて消費者庁マークがついている。医薬品と食品の間の保健機能食品に含まれる。保健機能食品には栄養機能食品とトクホがあり、トクホはデータを申請して個別に許可されている。所管が消費者庁となったので、850-860種類のトクホが消費者庁に申請しなおさなければならない状況になっている。市場は最高で6000億円。一般用医薬品(OTC)と同じくらいの規模だったが、今年は5494億円。その内訳は、整腸作用のほか、血圧、血糖、脂質代謝など生活習慣病が対象のもの。
医薬品とのかねあいが難しく、今、スイッチ化してOTCとすることについては、医師会と薬剤師会が対立しているところ。医師は全てに関わるべきといい、薬剤師は一度診断がついたら職能として薬剤師が患者と相談して進めたいといっており、議論が並行状態となっている。医療費増大とも関係して、セルフメディケーション、自分で自分の健康維持や増進に努力することが、重要視されてきている。
トクホとして考えたとき、血圧高めの方のためのトクホは、医薬品と同じ作用機作だからどうなのだろうか、血糖の吸収を穏やかにするくらいならトクホでもいいのか。などと悩ましく考えているところ。

2)トクホの機能性
トクホはRCT(Randomized Controlled Trial)試験を行い、非使用者と比較して99%の確からしさで有意差が出たときに承認される。承認された時期によって被験者の母集団や人数がばらばらだったりすることもあるし、最近では血圧や血糖値の境界域が変化してきたりしている。有意差は絶対値ではないので、数値だけみると承認されるときとそうでないときがある。
広告が不適切だったりすると、正しい使い方が知られないこともある。例えば、対象はBMI27以上なのに、広告ではスリムな人の絵を使ってPRいいのか。トクホの対象は高値健常者か境界域の人。
トクホ制度ができて20年。マーケットも成長したが、利用者に機能性の実感はあるのだろうか。利用者を見ているだけでは、余り効いていない印象を受けるが、摂取後の数値の変化の評価がされていない。専門家の中には、トクホ摂取することは、健康志向の動機付けだという人もいるが、それでいいのだろうか。
使い方についても、ガム1箱を5分かけて噛むようにと書かれていたりするが、本当にそういう食べ方は出来るだろうか。
ただし、血圧、血糖、コレステロールに影響するトクホの利用は慎重にしなくてはならない。薬事法にひっかかりそうな効能の書き方も見受けられる。
販売後機能性の実態調査が必要!トクホの機能性の程度を正しく理解して使わなくてはならない。

3)今後の検討課題
摂取方法、対象者、効果の確認(血圧は特に注意)
消費者庁のトクホの表示許可制度検討会では、トクホといわゆる健康食品について検討している。消費者庁で扱うものと消費者委員会専門調査会で扱う議論のすみわけをしているところ。消費者委員会専門調査会では、更新制度、トクホの一時停止等の起点をどうするのか等を検討中。例えば、食品衛生法で問題がなくてトクホになっているものはどう考えるのか。消費者委員会専門調査会はこれから1回/月、開催し、6月にまとめて7月に親委員会に回答する予定で進んでいる。
医薬品と食品の違いは、医薬品には副作用があり、製薬会社は市販後も報告の義務がある。医薬品では、個人が正しく服用して副作用があったときには、個人で申し出ることができる救済制度もある。


2.いわゆる健康食品


1)摂取上の注意
いわゆる健康食品とは、内容成分が抽出、濃縮されて、錠剤になっているもの。
消費生活センターに寄せられる相談全体の1割が食品関係で、その半分は健康食品(いわゆる健康食品、個人輸入を含む)に関わるもの。
相談があった健康食品のうち店頭購入品は6%。それ以外で購入した人(通信販売、マルチやマルチまがい、訪問販売、電話勧誘)からの相談が多い。年代では60-80代、契約金額が50万〜100万円のケースに相談が多く、そこに不満、問題があることがわかる。
病気を持つ人、血糖、糖尿病、血圧、ガンの人からの相談、苦情が多い。さまざまな注意喚起情報も厚生労働省HPに掲載されている。
アレルギーや飲み合わせにも注意が必要。スギ花粉が微量含まれているものに「花粉症に効く」と表示してはいけない。ローヤルゼリーやプロポリスにはアレルギーを持っている人には合わない人もいるので、メーカーも注意表示すべきだと思う。

2)含まれる成分
α―リポ酸を猫に与えて、胃洗浄したが死んだ例もある。このほかに、ビタミンKを多く含むクロレラとワーファリンの併用はいけないなどがある。
個人輸入には、大手通信販売会社が一緒に梱包してカタログで売られるものも含まれる。これらを個人輸入にあたらないと思ってしまう人がいるが自己責任になることを知っていなければならない。
例えば脱N-ジメチルシブトラミンは日本で未承認の肥満症を治療する医薬品で、通信販売で一緒に梱包されたものに含まれていて、摂取した人から動悸、発汗、気分が悪くなったという相談が寄せられた。
摂取上の注意情報を行政機関HPなどで提供しているので、利用者も十分に注意してほしい。健康食品は、成分量表示を徹底し、よく情報を出してほしい。食品なので、医薬品の量を超えないことが重要。
例えば、アロエベラ、キダチアロエには、バルバロインという下剤成分が含まれている。医薬品では薬局方でアロエベラの葉の液汁が用いられ含有量は4%と決まっている。健康食品では、キダチアロエの根、葉肉、葉(全体)が用いられる。また、医薬品とほぼ同程度の、生理作用を及ぼす可能性のある量が含まれている飲料もあった。このような健康食品は医薬品との境界が曖昧なのではないか。コンドロイチン硫酸ナトリウムは医薬品成分だが、コンドロイチン硫酸を使った健康食品も多数、販売されている。

3)品質と表示
ヒアルロン酸は、食べると消化され、体内でタンパク質として再構成されるから、ヒアルロン酸を含む健康食品もどのように吸収されるかすべてがわかっているわけではない。消費者の期待にヒアルロン酸含有量を表示するなど、企業も応えるべきではないか。ヒアルロン酸を含む健康食品の調査をしたら、成分量にばらつきがあり、崩壊性も基準がないので、いろいろだった(医薬品はとけやすさの基準が定められている)。
アミノ酸サプリを大量に買ったら、カビが生えていたこともある。
健康食品の品質がわかるような表示も必要ではないか。
第三者認証(Good Manufacturing Practice:GMP)を一定品質をクリアしたもの対して与える。消費者も一定品質のものを認識するようになる。

4)広告と機能性表示
事業者サイドは、自社製品の差別化をしたいし、消費者サイドは、加工度が高くても原産地表示がほしいものもある。
薬事法に抵触しそうな広告も見受けられる。
例えば、「関節にお悩みの方」はよいが、「関節痛にお悩みの方」はだめ。 
健康増進法の虚偽・誇大表示に該当するおそれのある広告を見かけたら、薬務課等に届けること。
加齢でヒアルロン酸が減ったら、経口で本当に補えると思わせたり、ブルベリーの横に目の絵を描くのもよろしくない。
消費者のパトロールも有効なので、気になったら情報提供してください。
科学的根拠のない成分商品については一切機能性表示をしないこと。機能性のある成分について機能性表示を認める方向で、その仕組みづくりをすれば、機能性のない食品は「退場」していくことになると思う。商品の機能よりも、成分の機能が重要!消費者が判断できるような整備が必要!


3.まとめ


消費者は、事業者に問い合わせをして確認し、きちんと答えてくれる事業者を選ぼう。
健康被害が出たらすぐにやめる(解約できる仕組みがある)
商品の機能性でなく、成分の機能性である
最後のスライドの写真は、OTC(Over the Counter)医薬品を売る人が白衣を着ている事例。登録販売員、薬剤師以外は白衣を着ないこと、白衣の人にはきちんと尋ねて正しく使える習慣(仕組み)ができるといいと思う。


会場風景1 会場風景2

講演後の質疑応答 
  • は参加者、→はスピーカーの発言

    • 市民・消費者に向けた情報発信は、どのようにすると市民・消費者に情報が届くか。国民生活センターではどのようなことをしているのか→センターでは記者発表をしたり、消費者からの問い合わせには返事を返したりしている。
    • HPにアクセスできない人はどうしたらいいでしょうか→記者発表はマスコミに出るので効果がある。継続的な情報発信が重要だと思う。消費者と直接話せることはよいことなので、ご意見を待っています。
    • 電話をしやすい仕組みづくりが必要ではないか→国民生活センターの商品テスト部には技術相談他が1000件来るので、電話で応対している。トラブルメール箱には毎日情報が入ってくる。ステロイドが入っていないはずなのに、肌のトラブルがよく治るので含まれているのではないかという意見が15件トラブルメール箱に入ってきた。こういう電話から問題が見えてくることもある。
    • 健康食品の原産地表示はどのようになるのか→原産地表示は安全性を保障するものでないが、求められている情報ではあると思う。国内のある養蜂場の写真がよく出るが、原料の大部分は中国からの輸入で、写真の印象と実際は違っている場合もある。 
    • 安全の話ではないが、消費者が求めている情報が正しく伝わるようにお願いしたい。原産地表示でミスリードがないようにお願いする→差別化のために原産地表示が使われることがある。
    • 国民生活センターに寄せられる相談の中で食品に関わるものの内容は→契約関係がおおい。例えば値段がこんなに高いのに効かない、摂取後具合が悪くなった、一緒に注文した人のものと中身が違ったなど。表示では、中国産冷凍ギョウザ事件のときは急増したが、いつもある程度の数はある。健康食品の健康危害は、下痢、湿疹などで、500件/年くらい。健康食品を原因に決め付けている人も含まれると思うが、お医者さんにかかったのはそのうちの一部。
    • 相談者に高額の契約、高齢者が多いのにはどう対処したらいいと思うか→業界も頑張ってもらいたい。また、販売方法の指導もしてほしい。送りつけ商法には、業界で自主的にコントロールしてほしい。店頭は1万円以下なのだから、高額契約は注意してほしい。背景には高齢者が高額契約にすがっても健康になりたいと思う構図がある。
    • 健康食品を売る企業には、製品は高く売れたらいいという気持ちもあるのだろうか→健康食品を全面否定するのは簡単だが、市場が大きく、いいものもある。今日は、現状の問題を掘り下げたいと思った。健康食品を全部廃止して、登録制にせよといっても、実際にできるだろうか。宣伝方法の改善も必要。現状を見つめて考えたい。何も利用しない人がいるのも、もちろんありうる。
    • 健康食品は医薬品ではないので、病気の治療や予防には使えない。健康食品と医薬品は異なる位置づけだと思う。
    • いわゆる健康食品を廃止したらどうなるのでしょう→効能が示されていれば期待して買う人はいる。摂取した人すべての実生活に機能性効果があるかどうか検証するのは難しい。

    全体討論

    3つのグループに分かれてディスカッションをした後、各グループから話し合いの内容が報告されました。
    ○第2グループ
     わかりやすいお話ありがとうございました。このグループでは、企業、大学や高校の教師で話しあった。健康食品、トクホは使わないで済むくらい健康ならば必要としない人もいるだろう。実際には、社会の中で経済効果があるのは事実で、頼っている人もいるのでなくすことはできない。市民がリテラシーを持つのが大事だが、これは難しく教育が重要。しかし、健康被害が出るものについては網をかけるのが急務。先生、メディア、親の情報からリテラシーが高まることが大事。教育内容も時代で変わるように、健康や食の教育内容も変化していくものだと思う。
     トクホの定義、食品の定義もあいまい。過剰摂取しないように、企業は広告をしっかりしてほしい。行政のしばりも必要かもしれない。

    ○第3グループ
     例えば、膝が痛いという患者に、命には関わらないと言って対応しない医者にも問題があるのではないか。そうなると健康食品に頼らざるとえない。例えば、高校生がタレントのCMで買ってしまうことがある。生徒にディベート「コラーゲンに美肌効果があるか」をさせたところ、適切な使い方のためには消費者から動かないとだめだということになった。国民生活センターに頑張っていただきたい。
     メーカーに問い合わせても、マニュアルどおりの対応で、不親切で問題を感じた。わかりやすい伝え方を工夫したり、わかりやすくしてほしい。相手によって省略して説明するのがいいこともあり、対象にあった説明がほしい。すべてを自分では理解判断できないので、合理的判断のための学習は大事。

    ○第1グループ
     制度そのもののあり方を議論した。科学的エビデンスがないものには効果がないと言ってもいいのではないか。食品添加物にはポジティブリストがある。科学的根拠によって効果があるものとされているもののポジティブリスト化が必要ではないか。届出制度でもいい。ネガティブリストを作っても、載っているものは変わらず売られるだろうから、どんな制度が有効か検討しなくてはならない。
     制度が整えば、規制緩和もありうるかもしれない。消費者はOTCと健康食品の両方を利用できるので、過剰摂取、のみ合わせに気をつけなければならない。誰がどうやって規制するのか。食品安全委員会はなぜ健康食品の評価しないのか。サプリメント法はどのようにするのがいいのか。
     通院患者で今の医療に不満があって、健康食品を代替として利用するときには、医師はきちんとと指導すべきだろう。葉酸のようにサプリメントでしか摂取しにくいものは、医薬品として与えるべきかどうかの検討が必要だろう。


    全体のまとめ

    宗林先生から全体のまとめのお話がありました。
    「以前は、健康食品の選び方について講演することが多かったが、このごろは市場が広がった現状に即した問題点に関心が移ってきた。
    健康食品が広く利用されている現状のなかで、利用するときに注意しなくてはならないことや、選び方、また、そもそも本当に必要かとの意見も今日いただいたが、そのような考え方を心に留めていていただければと思っている。学校教育、薬剤師、家庭、女性への働きかけを実行していきたい。
    消費者はどう考えたらいいのか。病気の予防や治療の効果がある医薬品と、機能性が検証されているトクホと、機能性がある「いわゆる健康食品」が混在している現状を全体でみたときに セルフメディケーションのための道具の整理が必要だと思う。個人が輸入したものなどで健康被害も出ているのに、医療従事者、医師や薬剤師が健康食品をよく知らない。法律で整理できないものに対しても、消費者に対して直接的、間接的に働きかけて対応していきたいと思う」