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「大学生が考える〜バイオテクノロジーと理科教育」開催報告

 2004年4月21日(水)お茶の水女子大学生活科学部本館大講義室306において標記フォーラムがお茶の水女子大学ライフワールド・ウォッチセンター(LWWC)とNPO法人 くらしとバイオプラザ21の主催で開かれました。
会場には学生、バイオ企業関係者、科学館、大使館、教師などいろいろな方々90余名が集まり、基調講演の後には活発な議論が学生パネリスト、会場参加者を巻き込んで行われました。途中、冨田房男先生(北海道大学名誉教授)よりご提供いただいた遺伝子組換え納豆を試食しました。基調講演講師、学生パネリストを含む参加者の半数以上がトライしました。
基調講演レジメ、詳細な記録とアンケートの全集計をご覧になりたい方はここから報告書

pdfファイル (A4版16ページ)をクリックしてください。


基調講演1 「理科教育と生活世界の微妙な関係」 LWWC副センター長 服田昌之

私達の暮らしの中で自己責任で判断するためには科学知識、たとえば遺伝子やDNAに関するリテラシー(科学的教養)が必要になるが、実生活に必要な知識を与えることが科学教育のすべてだろうか。
自然の中に何かを探求し思考力を育む科学教育が必要で、体を鍛えるように脳を鍛え、かつ情緒を育むのが大事。
生きていくときに役に立つ理科教育は実生活に役立つだけでなく、広がりがあり、生活と微妙につながり、実生活の判断力につながり、思考力、判断力を高める。理科教育と実生活のつながりを私はこのように考える。

基調講演2 「不思議?発見!感動*の理科教育を目指して」 LWWCセンター員 千葉和義

理科系の人間は暗いというイメージがあるが、理科系は変なヒトだろうか?
不思議に感じる気持ちから発見が生まれ、感動が呼び起こされるのだか、このような体験プログラムを開発、実行すればよい。湾岸生物教育センターで行った高校の教頭先生達の研修では、大人も理科で感動できることがわかった。筑波大学附属盲学校では、バラの香りのゲラニオールが酸化されてレモンの香りになる実験や、ウニに触れる現物教育を行い、これらの実験を通じて感動を伝えられることがわかった。
安全・安心と理科教育の関係と考えると、安全は数値化、定量化できるが、安心は心情的で定量化でない。理科は定量化できる世界なので、安全・安心教育には理科教育が必須。高校での組換え実験前後のアンケート調査で、組換え実験後に安全・安心な技術であると思う生徒が増えた。実物に触れることで「安心」に到達できる。

千葉先生「理科系の男は。。。」 会場からの意見 会場からの質問

質問:理科が好きなヒトは理科が楽しいのは当たり前。嫌いはヒトには理科が楽しくない。
回答:理科実験は感動を与えるショウだという。楽しくする努力が足りないと思う。面白い、楽しいという気持ちは人間特有のもの。
意見:科学館で実験指導をしていると、「楽しそうにやっている人たちを見たから、楽しいと思った」という感想が聞かれることがある。
回答:面白い、面白いと講師が夢中になって見せるテクニックも大事で、小学校の先生にはそういうスキルを身につけてほしい。


パネルディスカッション 「理科教育について」

コーディネーター
丸 幸弘 (有)リバネス代表取締役社長
東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻博士課程2年
学生パネリスト
  • 赤石布美子
  • お茶の水女子大学大学院人間文化研究科ライフサイエンス専攻博士前期課程1年
  • 宇田真弓
  • お茶の水女子大学大学院人間文化研究科ライフサイエンス専攻博士前期課程2年
  • 大野布美子
  • お茶の水女子大学理学部情報科学科2年
  • 坂本真一郎
  • 大阪大学微生物病研究所エマージングウィルス研究センター博士課程1年
  • 鈴木礼子
  • お茶の水女子大学理学部生物学科4年
  • 長谷川和宏
  • 東京都立大学工学研究科機械工学専攻修士課程2年
  • 廣田絢子
  • お茶の水女子大学大学院人間文化研究科ライフサイエンス専攻博士前期課程2年
  • 藤田大悟
  • 東京工業大学生命理工学部生物工学科4年

    司会の丸です パネリスト1 パネリスト2

    1分間自己紹介のあと、会場を巻き込んだ討論が行われました。主な意見は次の通りです。

    最近の理科教育について思うこと

    ○技術の判断をメディアに任せているとことに問題がある。バイオリテラシーを皆が持って判断できるようになるといい。バイオリテラシーを高めるための小学校からの教育が大事。
    ○食品など身近な物は親が選ぶ物を世代として受け継いでいく。受けつがれていく判断基準がひとりの人の中で作られるときには、科学教育はあまり影響していないのではないか。
    ○生活科学を中心とした理科教育だと、役に立つことばかりが研究されて、基礎研究が無視されていくのではないか。


    あなたにとって理科教育とは?

    ○人間は一体どこからきてこれからどうなるのか、は理科で考えること。理科は哲学的なことを考えるきっかけ。
    ○理科は実験のように、手を動かして学ぶもの。
    ○事実を考える学問。文化に影響されず再現性があり場所が変わっても現象は不変。理科の前で人間は平等。
    ○生活や身の回りの環境すべてに科学がからんでいる。身の回りを考える材料としての科学。
    ○私にとって理科はわくわくしたことがない科目。資料集で語呂合わせで化学反応を覚えていた。
    ○小中学校の記憶が薄れたときに考える理科は、方法論。初歩的な課題や専門的な課題へ、あるアプローチの仕方を繰り返していくのが理科。
    ○興味を持たせるきっかけ作りが教育というもの。理科教育は科学的なものの見方のできる人間を作るもの。

    皆で遺伝子組み換え納豆の試食

    あなたが理科を選んだ訳(会場参加者より)

    会場1:化学のおばちゃん先生が化学を論理的に教えてくれて化学が好きになった。サルチル酸ができたときにこれが薬に使われ、実生活につながっていることを知り感動した。
    会場2:小学校、中学校で理科の好きな先生に出会うと理科好きになる。バケツにろ紙を浮かべてナトリウムを置くと火が出て、水がアルカリ性になる実験が印象に残っている。文部科学省の理科実験費削減が理科離れにつながっている。理科教育はカネだ!


    理科好きになるには  理科好きを増やすには

    ○ウィルスの本を読んだことからウィルスの研究をするようになったが、その本に登場する科学者のかっこよさ!が印象的。カリスマ科学者が誕生すると理科好きが増えるのではないか。
    ○家庭教育が重要ならば、教育すべきは大人!大人も共に学ぶべき。子供だけに勉強させるのはおかしい。
    ○小学生に身近な食品が理科と関わっていることを教えるよい。親も一緒に考えるようになる。
    ○うにの発生の実習をする時には、先にお寿司のうにを食べさせてから始めては。理科教育は生活と密着させるとよい。(それは経費がかかるの声)
    ○自分で考えられるような最低限の知識を持った上で、やってみて楽しい理科教育がよい。

    「バイオテクノロジーと理科教育」、これからの理科教育について

    ○五感で感じる理科教育を!
    ○情報におぼれている現在の状態を整理するのも一案。
    ○科学者の人としての魅力をアピールするのがいい。
    ○自分とバイオの距離を近づける教育をしていくことが大事。
    ○ここにこれだけの人が集まったのは問題意識の表れだと思うので、この興味を継続してほしい。
    ○バイオは誰もが身近に感じられるものだから子供に有効な教育ができるのではないか。
    ○ボーイスカウトでは遊びながら何かを学ぶ。理科教育でも遊びながら実は教育になっていくようなプログラムがいい。科学館の親子実験教室で面白かったのは親が夢中になっていく姿。



    フォーラムを終えて

    コーディネーターの丸さんは初めてのコーディネーターだったそうですが、ご自分でいわれたように一生懸命に大学生らしく、役目を果たしてくださいました。バイオテクノロジーも理科教育も範囲が広くて、議論が絞れなかったのは事実ですが、アンケートにもあるように、そういう状態を目の当たりにすることで参加された方が、いろいろなことを考えられたことがわかります。学生パネリストがのびのびと発言し、遺伝子組換え納豆の試食もあり、参加者全員をお招きした懇親会では友達の輪も広がり、学ぶことの多かったフォーラムでした。

    服田先生の説明 納豆食べたい人 会場の全景


    アンケートの集計結果

    会場には90余名の参加者があり、そのうち44名の方がアンケートに協力してくださいました。私達の団体には珍しい平均年齢の低いフォーラムとなりました。



    パネルディスカッション、理科教育について


    アンケート自由記載(一部)

    *パネルディスカッション、理科教育について その他

  • 理科の面白さ、理科教育の可能性を再認識した一方、高校生に遺伝子組換え実験やPCR等をさせることの意義については疑問を覚える。現在でも高校の実験時間が足りないのに。
  • パネリストのほぼ9割が研究者のとしての見方をしていた。私も研究者のひとりだが、遺伝子組換えについても研究者なら安全と思うのが当然で、それを危険と思うイコール勉強不足であると思わせる空気が不快。
  • コーディネーターがすごく良い。もっと話を聞きたいと思った。
  • バイオテクノロジーと現代の理科教育をつなげようとしない方がよい。知ることの面白さを感じられる子供を育てる環境作りが理科離れを防ぐと思う。バイオテクノロジーも決して難しいものではないことを多くの親世代が学ぶべき。親の教育が大事という学生の意見はもっともだが、とても難しいこと。
  • 先生って大切だわ!
  • 理科、教育について、皆さんも悩んでいるようでした。僕も少し悩んでいます。ただ悩みが深刻になりました。
  • 理科教育の方向性は模索するしかないが、考えている人達が溢れていることを知り、励みになった。
  • バイオテクノロジーについては、その危険性がどこにあるかという話が出た方が良かったと思う。私自身はバイオテクノロジーを有用な技術だと思っているけれど、運用が雑だと原子力並に危険なこともあると思っている。
  • 議論となる話題が多く、焦点を絞るのが難しいように感じた。文系の人も多い方が良かった。
  • 勉強になった。議論にまとまりがなかったのは社会の混乱を反映しているのでしょう。仕方ないと思います。
  • 遺伝子組換え納豆を食べる経験ができてよかった。





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