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遺伝子組換え農作物に関するメディア向け勉強会開催される(札幌)

6月17日(木)北海道バイオ産業振興会議(HOBIA)主催、報道関係者を対象とした第1回勉強会が開かれました。
北海道では昨年度、遺伝子組換え農作物の試験栽培を規制するガイドラインが作られ、現在は条例化に向けた準備が始まっています。7月1日から北海道内7箇所で、条例案骨子をもとにした地域意見交換会が開かれています。その中では、遺伝子組換え農作物の一般栽培はもちろん試験栽培も行わないようにするという項目が記載されています。

このような状況の中で、5−10年の視野で北海道や日本の農業と食糧確保、国際競争を考えるとき、試験栽培まで禁止していいのかという意見が持ち上がりました。この勉強会はそのような志を持った人達が開いたもので、小さな部屋に定員18名一杯の会合となりました。この勉強会は今後、参加者の意見に沿って、テーマやスピーカーを決めながら継続して開かれることになりました。

今回は大澤勝次先生(北海道大学農学部教授)から遺伝子組換え技術は品種改良のひとつの手法であるというお話がありました。主な概要と質疑応答は以下の通りです。

なお、次回は7月5日(月)に角田誠二さん(角田農園代表取締役)をスピーカーに迎えて開かれます。

食の安全・安心条例(仮称)案の骨子
http://www.pref.hokkaido.jp/nousei/ns-rtsak/shokuan/Taro-kossi.pdf
また、北海道にとどまらずこの骨子に対する意見を全国に向かって求めています。
http://www.pref.hokkaido.jp/nousei/ns-rtsak/shokuan/douminiken.htm

大澤先生のお話

司会の冨田先生と講師の大澤先生 熱心に説明に聞き入る参加者

ウィルス抵抗性メロンを作り、安全性試験を行ってきた。この10年、研究者も遺伝子組換え農作物の説明を行ってきたつもりだが、環境保護団体や消費者団体との溝は狭まっていないと思う。

1) 遺伝子組換え技術は品種改良そのものである
人間は自然の中に生きているのではなく、品種改良を重ね原種からは考えられないほどに変化させてしまった植物を作物として育てている。
1900年以後、交雑育種法(それまでは選抜育種)が用いられ、1930年代からは突然変異育種法、1960年代からは胚培養のような細胞レベルで従来できなかった雑種が作れるようになった。細胞融合は台木用の品種開発には利用できたが、ニューバイオとして残る技術ではなかった。

2) 遺伝子は公明正大な情報伝達物質で生き物ではない
遺伝子は訳のわからない、悪いことをする物質だと思われているが、決められたタンパク以外は作れない。遺伝子の情報が伝えるアミノ酸の作り方が明確であるから、診断や親子鑑定にも遺伝子を使える。
生物に入ったときに予想外の悪いことをすると思うのは五回である。

3)遺伝子は自然摂理そのもので組換え技術はバクテリアから学んだもの
1980年、アグロバクテリウムという土壌微生物の感染のしくみがわかり、これをもとにして組換え技術の研究が始まり、1985年、病気に強い遺伝子組換えタバコができた。
アグロバクテリウムは植物の遺伝子に命令してオパインという物質を植物体内で作らせていた。このようなアグロバクテリウムの感染力に頼っている技術であって、感染や微生物についての詳細はわかっていない。組換え技術はそんなに簡単なものではない。
いまだに国産の組換え農作物を農林水産省が世に問うことができないのは残念。
スギ花粉症の体質が改善されるイネを世に問おうとしたが、今年の5月に全農は、栽培延期になってしまった。
組換え技術はアグロバクテリムに学んだ技術であることに代表されているように、遺伝子組換え技術は自然に学んだ技術で、極めて自然なものである。
大腸菌の世界では医薬品が作られ、既に我々は恩恵に浴している。組換え植物もいいものを作ってみんなが恩恵に浴せるように願っている。

参加者との意見交換

質問 遺伝子組換えの場合は殺虫成分が合成されることがわかっているが、従来法で作られた病気や害虫に強い農作物の中でも同じような物質ができるのではないか。従来法で作られた農作物の植物体内ではどのような変化が起こっているのか。
→そのような化学物質が植物体内で合成されることは予想されるが、従来法で品種改良された物については、一切調べられていない。

質問 交雑や選抜の方法ですでに作られている農作物に対し、科学的な後追い研究はしているか
→コシヒカリがおいしい理由は科学的にはアミロース、アミロペクチンの組み合わせの割合のお陰だが、なぜおいしくなったかは遺伝子レベルではわかっていない。おコメのおいしさを遺伝子で解明するのは非常に難しい
病気抵抗性、害虫抵抗性を交雑によって持たせた品種では野生種の持っていた抵抗性を残し、バッククロスで安定させている。これは抵抗性の遺伝子を入れるのと同じことを起こさせている。

質問 花粉による交雑によって予測できないことが起こることはあるのか
→従来の品種改良では、できてみるまでどんな性質になっているかの予測はつかない。その点遺伝子組換えでは予測しない性質を持つことはない。挿入遺伝子の入る場所によっては何が起こるか予測できないという人がいるが、変な場所に入ると宿主の遺伝子をこわしてしまうので、そのような植物体は育つことができない。
遺伝子組換えは生きている細胞に目的の遺伝子がうまく取り込まれたかどうか、まともに細胞分裂するかどうか、ちゃんとした植物体になるかどうか、目的の性質を持っているかどうか(例:病気に強くなっているかどうか)をすべて調べながら、希望通りのものを選ぶ。植物体のレベルになってよいものを選んでくるのは交雑も突然変異も同じ作業。
突然変異を利用している品種改良は方向性がないが遺伝子組換えは方向性を持った変化を起こさせているといえる。
花粉が飛ぶのはいけないというが、ちゃんとした植物になっているから花粉が飛ぶ。日本の生態系は、品種改良で作られた多種類の植物の花粉が飛ぶ中で作られてきたもの。変化することは生物の本質。

質問 遺伝子に対する漠然とした不安を晴らわれず、妖怪扱いされた結果、制度ができているのが現状。妖怪ではないことを示すにはどうしたらいいと思うか。
→遺伝子組換え技術はたまたま、食べ物に対する考え方をクローズアップしたといえる。技術に対する理解と受容は別なことである。食物で使う実質的同等性の考え方を生態系にあてはめたものが必要で、それを用いて妖怪でないことを示すのがいいと思う。

質問 市民が求めると研究者は研究データを提示するが、実験データを見せられてもよくわからなかったり、他の地域でとったデータでは信用できない。花粉の交雑の実験を市民とともに行い、科学データをとるような活動があってもいいのではないか。科学者はデータを出せばいいと思っているがそれでは不十分だとわかってほしい。

→研究者の提出データをわかりやすいものにしなくてはいけないことがわかった。市民にも実験データは場所が変わると変わってしまうものではない、ルールがあることも理解してほしい。国産の遺伝子組換え農作物を作って世に問うことができると、市民も関心を持つのではないか。
栽培現場を消費者が見学するといいのではないか。成長ホルモンであるジベレリンに浸してデラウエアぶどうを作るのを見学するとそれを不自然だと思う人も出てくるかもしれないし、イネにトウモロコシの遺伝子を入れてもイネであることは見ればすぐわかるはず。
遺伝子組換え技術を用いていない新品種で性質がどんどん変化していることが生産しているとわかるので、そういうことを生産者の立場から市民に伝えたら、遺伝子は従来の品種改良でも刻々と変化していることが理解できるのではないか。

質問 消費者団体が求めるようなデータが出されていないので、市民は、安全性を疑い反対しているのではないか。
→それは違う。北海道消費者協会は遺伝子組換え農作物についての勉強会参加も好ましくないという風潮がある。




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