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シンポジウム「北海道農業を生消協働で育てようin十勝」が開かれました。

〜給食を受ける消費者は食品を自分で選ぶことができません。特別栽培品に限らず生産物を本当の安全安心品にするために〜

8月11日(水)音更町文化センターふれあいホール(北海道帯広)で、「給食に最高品を!」地産地消推進協議会十勝連合(仮称)主催により、標記フォーラムが開かれました。ちょうど十勝は農家が一番忙しい時期でしたが、こういう問題を重要だと考える生産者数名を含む20名余が参加したフォーラムとなりました。代表者である西田純一さんは、今年で52回目の栽培を行っている生産者です。今回は大切な第一歩!継続的に北海道の農業を考える機会となる場を作って行きたいとのことでした。
現在、北海道では遺伝子組換え作物の栽培を規制する動きがあります。くらしとバイオプラザ21では、これからの日本の農業を長い目で考えていくときに、このような規制のために、将来の農業に役立つ選択肢が減るのではないかと懸念しています。今回のシンポジウムの開催も生産者の方達からの「今のやり方で、土壌は大丈夫なのだろうか」という思いから発したものです。私達はこのような生産者の声をお伝えし、広く「私達の食と日本の農業について」議論する場をつくって行きたいと考えています。

開会の挨拶 西田純一さん

51年間、多くの収穫物を得るために、土の中にどれだけの不要な肥料、農薬を入れてきたかを正直に見ると、このままのやり方で今後30−50年と続けられるとは考えられない。健全な微生物の助けを借りた本格的な土作りと品種改良が、絶対に必要!夏のこの時期には、参加できる生産者は少ないと思うが、ここで聞いた話について、家族や周囲の方たちと話し合ってほしい。

机にはった模造紙を畑の土壌の断面に例えて、 土つくりの大切さを語る西田さん パネリストの方々


講演1「作物も人も同じ大地で生きている」 帯広大谷短期大学生活科 教授 山崎民子

西田さんの栽培したメイクイーンのおいしさの科学的裏づけがほしいと思い、メイクイーンについて調べている。土が違うらしいとしかいえない。作物を育てるときの基本は土。 栄養士の教育に携わっており、来年4月からは栄養教諭を育てる講座も始まる。成分表を見て計算することと同じように、作物や土のことがわかることも大切であると、学生に気づかせるのが私の食育だと考えている。


講演2「品種改良が生み出す作物たち」 北海道大学大学院農学研究科 教授 大澤勝次

品種改良の歴史
紀元前からメンデルまでは選別、1900年代は交雑育種、1930年代は突然変異、1950年代は胚培養などオールドバイオと言われる技術、現在は遺伝子組換えなどニューバイオといわれる技術が新種改良で用いられている。
突然変異の例:二十世紀なしは黒斑病に弱いという弱点があったが、ガンマフィールド(茨城の放射線育種場)で、30年前に誕生した。ガンマフィールドは半径100メートルのすり鉢状の圃場で午前中ガンマ線を照射し、午後は作業する仕組みになっている。
胚培養の例:ハクサイとカンランを交配して、胚培養をし、ハクランが誕生した。
遺伝子組換えの例:1992年 世界初のウィルス抵抗性組換えメロンを作った。
 
安全性について
遺伝子組換え農作物はケースごとに審査しており、審査の具体的実例が蓄積されている。花粉の拡散についても、調べている。現在のところ除草剤抵抗性雑草は、蔓延はしていない。

開発に携わってきて
組換え生物、非組換え作物であれ、性質が変化する。生物が生態系に影響を及ぼすのは当然で、そうやって地球は現在の地球になった。循環がこれからのキーワード。
遺伝子組換え作物を開発してきたので、私自身、ずっと食べてきているが問題はない。ヒトへの安全性という意味では、反対をしている人の中にタバコを吸っている人がいることの方が信じられない。これだけ世界で遺伝子組換え農作物の作付けが増加したのは、外資系企業が脅しているからではなく、一度作った農家が作りやすいと判断し、作り続けているから。
食材の未来を考えるときに、組換えを使わない、使えないなどといっている時ではない。
バクテリアの知恵に学んだ組換え技術は、地球のすべてのルーツが共通だからできたこと。21世紀の共有財産として組換え技術を避けずにしっかり理解しよう。生物のつくるものはすべての生態系の循環の話におさまるものなのだから。


消費者が望む食の安全と安心」 生協コープ十勝常務理事 倉持泰子

帯広に育ち、食にずっと関わりながら、コープ十勝と20年かかわってきている。具体的には、納豆、豆腐、卵など、組合員さんに支持されている食品つくりもしている。

市民の不安
公害による健康被害に始まり、最近はO157から、環境ホルモン、クローン、雪印、組換え、口蹄疫、BSE、ダイオキシン、SARS,鳥インフルエンザと末端の主婦に不安が募っているのが現在の状況。家畜用抗生物質、家畜飼料の抗生物質が人間を抗生物質の効かない体にするというような根拠のない話で主婦には不安を覚える。その情報源はテレビ、マスメディア、店頭の表示や説明、生協のカタログ、口コミ。悪意がなくても、流通の習慣で北海道産牛が神戸牛になるような不誠実さも不信をはぐくむ。その点、履歴が表示されるのは、よいことだと思う。

安心の裏づけとそのためのコスト
市民の不安を膨らませるのは、クローン、組換え、添加物、抗生物質などを安全だというのも、危険だというのも同じ「学者」と呼ばれる人たちであること。
安心は、リスクへの対応がきちんとしているかという姿勢、表示され、答えてくれる相手がある、そういう仕組みが整備されることで得られる。
出荷時に基本的な情報が添付されるなど、安全の裏づけをとることが重要。バーコードで全食品の情報を、各家庭でインターネットで検索できることまでが必要だとは言いがたい。そのコストは誰が負うのか。そこまで生産者や流通を疑う消費者の姿や、そうしないとうそがまかり通るのが日本の仕組みだったのかと思うと残念。
安心・安全でおいしくて安いこと!を私たちは求める。消費者はわがままなものだが、農家の苦労を価格で上乗せするとして2割増までは我慢すべき。

遺伝子組換え食品への不安
遺伝子組換えについては専門家でも意見が分かれていることが、最も不安を感じる原因であると思う。
○ 組換えによって眠っている遺伝子が起き出してアレルギーなどが起きないか
○ 長期に食べていないものを食べて大丈夫か
○ 抗生物質抵抗性遺伝子を入れた農作物を食べると抗生物質の効かない体にならないか
○ 除草剤抵抗性を持った雑草ができないか


「土が育てる食育」 酪農学園大学大学院教授 中野益男

農業では土つくりが重要であり、日本の歴史の中から、学べることがないか考えてみたい。 三室遺跡の600年続く美田の真相は炭素埋設により、微生物が増え、電位差が生じ、化学成分が改良されていることがわかった。炭を埋めて、土をよくしたり、縄文文化に学んで多種の食べ物を見直すことも、今後の永続的な農業の参考になるかもしれない。
食育は農産物の生産の場から学ぶものであり、ドイツの教育学者であるシュタイナーが始めた学校では、今でも農作物つくりを学校のはじめに行っている。


パネルディスカッション

コーディネーター 板橋茂美さん
4人の講師にコーディネーター、西田さんが加わり、会場から集められた質問を中心にパネルディスカッションが行われました。

質問:おいしいジャガイモの正体とはどんなものですか。
山崎:ジャガイモのうまみ、こくだと思うが科学的に分析しきれていない。

質問:何年かかれば殺菌、殺虫の農薬のいらない農作物ができますか。
大澤:農水の品種改良の方向はおいしさにシフトしてきている。
もっとも大事なのは土!土が疲弊してしまったので、農薬、化学肥料のあまりいらない農作物改良が注目されている。今は一定の農薬をかけなくてはならない品種になってしまっており、農作物の抵抗性もそれぞれ異なっている。イモチ病抵抗性イネの遺伝子組換えでかなり近いところに来ているので、この実現が組換えを理解してもらう第一歩であると思う。このイネが農薬のいらない作物の理解の第一歩になることを期待する。

質問:畜産履歴について、生協は給食に関わるつもりはありますか。
倉持;生協の産直品はバイヤーと生産者の間で履歴確認をしている。種類が少ないので。市場から購入している一般品は県産までしかとれないと思う。
高齢者への夕食を帯広市と連携して行っているが、事業として投資をするだけの体力がない。広報費用が削減されれば、3年後くらいには事業として高齢福祉に展開して、貢献していきたいという目標は持っている。

質問:トリプトファン事件と遺伝子組換えとはどんな関係か
大澤:昭和電工が健康食品として遺伝子組換え酵母でアミノ酸を作ったときに、事故が起こり、遺伝子組換えにより予想されない副産物が合成されたのではないかという論争があった。この問題は技術によるものでないことがわかり、今ではベンチャー会社でこの方法が使われている。

板橋:どの先生も「循環」が大事というご意見で一致している。
大澤:農作物の力を引き出し、化学物質に頼らないという中野先生の意見に賛成。遺伝子組換え技術は、農薬に頼らないで丈夫に育つ品種をつくる方法であるという点で、この技術が大事だと思っている。
中野:最終的には土壌微生物の役割が大事。微生物に学ぶ研究である遺伝子組換え技術は、検証ができれば、十分に大事だと考える。
板橋:有機農法も最新の技術も同じ方向を向いているということを今日のまとめとしてこの議論を終わりたい。





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