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「メディアの方に知っていただきたいこと(遺伝子組換え作物・食品)」ができました

 2011年3月31日、私たち、NPO法人くらしとバイオプラザ21は、日本に大量に輸入・利用されている遺伝子組換え作物について学び整理しましたので、メディアに方にもご利用いただければと思い、冊子「メディアの方に知っていただきたいこと(遺伝子組換え作物・食品)」(全24ページ)を作成しました。

 
「メディアの方に知っていただきたいこと
(遺伝子組換え作物・食品)」表紙
   「知っておきたいこと(遺伝子組換え作物・食品)」
 2013年3月(改訂版)表紙

 遺伝子組換え(Genetically Modified :GM)作物の商業栽培は、世界で広く行われ、日本にも大量に輸入されていますが、「GM作物は食べても大丈夫なの?」「安全性は確かめられているの?」「農薬の使用量は本当に減っているの?」「遺伝子を組み換えるなんて、自然の摂理に反するのでは?」「GM作物の花粉が飛んで近縁の植物との交雑種が生まれたら、生態系に悪影響が及ぶのでは?」「表示はどうなっているの!」など、いろいろな疑問や不安の声が聞こえてきます。私たちは、その答えを新聞やテレビに求めますが、必ずしも常に正確なわけではありません。そこで、少しでもこのような現状を知り、自ら考える助けにするために、GM作物の栽培状況に関する基本的な事実、これまでの科学的な検証で分かったこと、よく見られる誤解などについて、整理してみました。メディアの方が報道されるときに、この冊子を少しでもご活用いただければ望外の幸せです。 

冊子をご希望の方は、140円切手2枚を同封のうえ、くらしとバイオプラザ21まで郵便で、送り先を明記してお申し込みください。2冊以上お入用の時はご相談ください。


主な内容
 内容を精選し、大きく4つの章に分けました。冒頭の10項目の要約を次の2つの章で解説する流れになっています。最終章である「科学的な情報の読み方と伝え方」では、情報の信頼性、データの扱い方、単位など、科学の基本的な内容について書きました。
 ○メディアの方に知っていただきたいこと〜10項目の要約
 ○遺伝子組換え食品編
 ○遺伝子組換え農作物環境評価編
 ○科学的な情報の読み方と伝え方

10項目の要約
1.栽培のメリット
GM作物は1996年に米国で栽培が始まって以来、世界的に拡大しており、29カ国(2010年)で栽培されています。その栽培面積は約1億5000万㌶で、日本の耕地面積のおよそ30倍です。
GM作物の栽培によって、世界的に農薬の使用量が減り、GM作物を栽培する農家にとってメリットのひとつとなっています。

2.企業の種子支配はあり得るのか
巨大企業が種子を支配するとよくいわれますが、企業間の種子開発競争は激しく、各社が地域に合わせた品種の開発を行っていて、1社が種子を独占することは容易ではありません。たとえば、害虫抵抗性GMトウモロコシは、5社以上の企業が種子を開発しています。また、GM作物の開発が進んでも、生産者も次々に開発されるよい品種を選ぶので、各社のシェアは拮抗しており、GM作物1品種だけになることはありません。

3.遺伝子組換え技術とは
GM作物作出のための遺伝子導入技術は、自然界で微生物が植物に対して引き起こしている遺伝子導入の現象を応用してつくられた技術です。

4.医薬品では既に使われている遺伝子組換え技術
インターフェロンやインスリンなどの医薬品では、すでにその多くがGM技術で製造されています。

5.遺伝子組換え食品の安全性
GM食品の安全性審査は実質的同等性という考え方によって行われています。例えば、「害虫を殺す農作物を人が食べても大丈夫なのか」という声が聞かれますが、害虫抵抗性GMトウモロコシの茎や葉でつくられる「害虫を殺すタンパク質」(Btタンパク質)は、有機農業で生物農薬として使われているもので、人には悪い影響はありません。

6.遺伝子組換え食品の表示
豆腐や納豆などに「組換えでない」という表示があったり、食用油やしょう油などは義務表示の対象外となったりしていますが、これは安全性とは関係なく、消費者の選択のために行われているものです。「組換えでない」から安全だという意味ではありません。

7.遺伝子組換え作物は生物多様性を失わせない
GM作物が普及しても、従来の農業以上に野生の生物の多様性に影響を与えることはありません。イギリスでは、2000-2003年、GMのテンサイ、トウモロコシ、春播きナタネ、冬播きナタネを多数の農場で栽培して調査しました。その結果から、GM作物の導入が野生の生物の多様性を失わせないことが示唆されています(Natural Environment Research Councilによる調査、2003年)。

8.従来の品種改良と遺伝子組換え技術による品種改良の違い
従来の品種交配は、人が意図的に作物と作物を交配させています。この交配によって、結果的に遺伝子は組み換わっています。意図的な交配ですから、人間の手が加わらない限り、自然には決して起こらない現象です。種を超えて交配することもあります。意図的に品種改良をするという意味では遺伝子組換えも従来の交配も同じ技術領域だと言えます。

9.除草剤耐性を持つ雑草
除草剤を散布しても枯れないGMダイズの普及で、どんな除草剤も効かない「スーパー雑草」が現れたという人がいますが、そもそも「スーパー雑草」というものは存在しません。ある除草剤に耐性を持つ作物ができても、他の種類の除草剤で枯らすことができます。
 雑草が除草剤への耐性を獲得することは、GM作物ができる前から起こっていました。

10.生態系への影響
GM作物は、導入する場所に生息する植物や昆虫に対する影響を評価し、生態系に悪影響を与えないような管理ができると確認されたものだけが、輸入や栽培を許されます。
日本の各地の輸入港周辺にGMナタネの種がこぼれ落ちて、自生し各地に広がっているかのように時々報道されます。しかし、西洋ナタネは、人の手の加えられていないような自然条件下では、繁殖が難しいことが知られており生態系に影響を及ぼす種類とはみなされていません。
過去60年間、カナダから大量に西洋ナタネが輸入されており、GMナタネが輸入される前から種がこぼれ落ち、芽が出たことがあったと考えられています。しかし、それが繁殖し、生態系に悪影響を与えたということはありません。また、GMナタネの繁殖力が特に強いということはなく、普通の西洋ナタネと同じです。


この冊子は最終版ではなく、スタートであり、これからは皆様のご意見を頂戴し、学びながら進化させていきたいと考えております。また、この冊子を作成するのに当たり、多くの方々にご助言、ご指導をいただきましたことを深く感謝いたします。

〜「メディアの方に知っていただきたいこと(遺伝子組換え作物・食品)」は筑波大学形質転換植物デザイン研究拠点共同研究によって作成しました〜

「メディアの方に知っていただきたいこと(遺伝子組換え作物・食品)」の改訂版「知っておきたいこと(遺伝子組換え作物・食品)」は以下からダウンロードできます。