TTCバイオカフェ「遺伝子組換え作物が国内に入り10年以上が過ぎた現在の状況、そしてこれからどうなるの?」
2016年5月27日、東京テクニカルカレッジの1階フロアにて、TTCバイオカフェを開催しました。講師に農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門の小松 晃さんをお迎えして、「遺伝子組換え作物が国内に入り10年以上が過ぎた現在の状況、そしてこれからどうなるの?」というタイトルでお話いただきました。
バイオカフェ恒例の音楽演奏は、この日は岩澤葵さん(クラリネット)と樋渡彩さん(バスクラリネット)のお二方の坂本九メドレーなどでした。会の最後には、この4月より東京テクニカルカレッジの校長となられた髙瀬先生が、小松さんの農業生産に関する話にちなみ、「緑の革命」で有名なノーベル平和賞受賞者・ノーマンボーローグ氏のことなどに触れたご挨拶をくださいました。
また、今回は20回目を迎えるTTCバイオカフェですが、TTC1階入り口付近に2016年2月にオープンしたカフェのある1階のフロアを会場として初めての開催となりました。
音楽演奏の様子
髙瀬校長のお話
小松さんのお話
小松さんのお話
今日は遺伝子組換え作物のこれまでと、これからのことについて話したい。
1994年に日持ち性が改善されたフレーバーセーバートマトが発売された頃と比べると、世界の遺伝子組換え作物の栽培面積は、およそ100倍に広がった。「でも、安全性はどうなの?」と疑問に思う人もいれば、ある程度この分野の知識をもつ人は「技術としてはこれくらい広がって当然」と思う人もいて、様々だと思う。「日本にも輸入されているの?どのくらい輸入されているの?」との疑問も皆さんの中にはあると思うので、現状とこれらのことについても触れていきたいと思う。
そもそも育種(品種改良)とは?
そもそも品種改良のスタートは、食べづらい、育てづらい野生種から始まる。それらのDNA、遺伝子が自然に書き換わり(つまり突然変異によって)、人間に都合のよい性質を獲得した植物を選んでくる作業が最初のステップ。これが栽培化。さらに、作物の性質を交配や人為的突然変異など、人間の手を加えて書き換えることで、更にニーズにあったものを作出すること、これが育種(品種改良)。
遺伝子の変化は、例えば紫外線があたり、細胞内のDNAが切れた後の修復過程で修復ミスが生じるために起こることがある。人間だとほくろができたり、それががん化することがある。作物も同じで、自然突然変異によって外見や病気に対する抵抗性などの性質が、まれに変わることがある。これを利用するのが自然突然変異育種。
ここで遺伝子の書き換わり(突然変異)で、形態や形質に変化が起こる事例を3つ紹介したい。1つめはインディカ米とジャポニカ米の脱粒性の違い。インディカ米は稲穂でコメが実ると、籾が手でなでるだけでもポロポロと落ちてしまい収穫ロスが生じるが、ジャポニカ米は落ちることはない。この性質の違いはたった1つの塩基の違いで起こっている。
2つめは単為結果のナス。通常、ナスは花粉が雌花に受粉しないと実がならないが、自然突然変異により成長ホルモンに関係する遺伝子の一部が抜け落ちてしまった変異体は、受粉しなくてもしっかり実が大きくなる。
3つめはミカンの早生・晩生の違い。これは枝変りといって、1本のミカンの樹上にある1枝だけ、他の枝と性質の違うものが現れることがあり、それを利用して新しい品種を作出している。このようにして、DNAの変化、突然変異によって同じ作物でもバラエティがどんどん増えていく。
次に、このようにして作った様々な品種同士を交配する品種改良について考えてみる。例えば、美味しくて形が良いが病気に弱いトマト品種Aと、不味くて形も悪いが病気に強いトマト品種Bがあるとする。この2つの品種を交配すると、品種Aと品種BのDNAを半分ずつ、まぜこぜにもらった、いろいろな性質のトマトができる。その中から良いものを探してくる。探してきたものと品種Aと再び交配すると、またDNAは半分ずつもらった子ができる。これを繰り返していくと、最終的にほとんどのDNAが品種Aで、病気に強い遺伝子だけを品種Bからもらったトマトができる。これを戻し交配といい、育種の現場で通常行われて作業である。ただ、このように何回も交配を繰り返すので、1つの新しい品種ができるまでの時間が10年程度かかる。果樹の場合は花が咲くまで数年が必要なので、交配して新品種を作ろうとすると数十年かかることがある。
品種改良技術の1技術としての遺伝子組換え技術
遺伝子組換え技術は、育種の分野では品種改良の1つの技術として用いられている。例えば、コムギの病気に強い遺伝子をとってきて、イネにいれてやると、コムギの遺伝子がイネの中で働いてタンパク質を作るようになる。全ての生物の遺伝子は、デオキシリボ核酸、DNAで出来ているので、理論的には、遺伝子組換え技術は全ての生物の遺伝子を利用して新しい性質を付与することが期待できる。様々な生物の遺伝子が分かってくれば、交配によって2つの親のDNAの全部を混ぜこぜにしなくても、例え同じ作物でないとしても、病気に強くなる遺伝子だけをピンポイントに作物に導入してやれば、新たな病気に強い品種ができるはず、という考え方。生物の持っている能力をうまく活かすことができる技術ともいえる。
ただし、これまでの交配作業では、出来ない性質を持たせた作物を作り出すこともできるため、人為的であるとして懸念する人もいる。それでも、干ばつや食料難に対応するために、他の植物の遺伝子を使わなくてはいけない状況も、今後出てくるかもしれない。
日本での遺伝子組換え作物の開発状況
日本で開発中の遺伝子組換え作物について、期待と懸念が常々皆さんの中にあると思う。期待されているものの1つは、複合病虫害抵抗性の農作物。農薬を散布しなくても良くなり、生産者は農薬代や作業などコストを抑えることができ、安定供給にもつながる。他には不良環境への耐性作物が挙げられる。温暖化、乾燥化、冷害など突発的な異常気象に対して、最低限の収量を確保できるものが必要。また、石灰質のアルカリ土壌に対する耐性、機能性成分を高めた農作物としてスギ花粉症治療米、低アレルゲン米などがある。
食用以外では低コスト高付加価値の飼料作物も期待され、研究開発を進めている。日本では、大量の穀物を輸入し、家畜のエサにしている。家畜に与える際には穀物では足りないアミノ酸をサプリメントとして追加している。追加しているアミノ酸について、飼料原料としての米がもともと高含有化出来れば、そのサプリメント分のコストは必要なくなる。
そのほか、環境修復に役立つ遺伝子組換え作物もある。例えば、カドミウムや残留性有機汚染物質を多く吸収する植物など。微生物を利用して行っていた環境修復を、植物で行うことをファイトレメディエーションという。カドミウム高吸収の作物の場合は、その作物の植物体を、環境に悪影響を及ぼさないような方法で焼却処分する必要があるので、その焼却方法も同時に開発する必要がある。
そのほか、バイオマスをして利用する作物として、高収量低リグニン植物、植物体が大きくなるサトウキビなどの開発も進められている。
遺伝子組換え作物・食品に対する懸念
では、遺伝子組換え作物に対して、消費者の方々がどのような懸念が持たれているのか?
先ずは環境への影響について。遺伝子組換え作物を野外で栽培する場合、環境への影響、例えば遺伝子組換えすることで繁殖力が強まり、近縁種と交雑することで広まってしまわないか?と心配されることがある。
食品の安全性については、遺伝子組換えをすることでアレルギーの人が増えたりしないか?そもそも害虫が食べると死んでしまうような遺伝子組換え作物は人に影響はないのか?遺伝子組換えの飼料を食べた家畜のお肉などを食べても大丈夫なの?などの懸念が良く聞かれます。
例えば、害虫抵抗性トウモロコシについて。トウモロコシは、特定のガの幼虫に食べられてしまう被害にあうが、殺虫剤を使えば虫食い被害は押さえられる。海外の大規模な農場では、非常に広いトウモロコシ畑に小型ヘリで農薬散布するため、農薬代や散布の手間だけでなく、ヘリコプターによる空中散布の燃料代もかかる。そこで、農家さんは、殺虫成分が植物の体の中で作られる品種、遺伝子組換えで害虫抵抗性を持つようにしたトウモロコシを栽培することで、殺虫剤散布にかかるコストを軽減することをしている。虫食い被害がなくなるということは、虫食い跡から発生するカビ毒によるリスクの減少にも繋がる。
このように農家にはメリットの大きい遺伝子組換え作物の栽培や利用については、消費者の懸念と、農家さんの期待が相容れないことが最大のポイントである。こういった場合、私たち消費者は、農家さんたちとどのように折り合いをつけていけば良いのか、考えなくてはいけないのかもしれない。
現在流通している遺伝子組換え作物について
遺伝子組換え作物に対する消費者の懸念に対して、国は何も対応していないわけではない。遺伝子組換え作物の用途に応じて、生物多様性への影響、食品や飼料としての安全性について、確認されたものしか輸入して流通できないルールになっている。遺伝子組換え作物ができたからと言って、すぐに食卓に上るというわけではなく、その前に科学的な根拠に基づく安全性評価を行い承認している。
例えば、先ほども紹介した遺伝子組換えの害虫抵抗性トウモロコシ。遺伝子組換えによって組み入れた遺伝子から作られる殺虫性成分はBTタンパク質と呼ばれる微生物のタンパク質。「BT」はBt菌のことで、バチルス・チューリゲンシス(Bacillus thuringiensis)という菌の略。このBTタンパク質やBt菌は微生物農薬として有機農法をしている畑を含め、もう40年以上利用されているもの。BTタンパク質は、哺乳類などの動物が食べると、胃で酸性の消化液によって完全分解されてしまうが、昆虫のアルカリ性の消化液では完全分解されずにそのまま腸に移動する。昆虫の腸の表面にあるBTタンパク質の受容体にそれらが結合してしまい、腸の働きが悪くなってしまう。そのため、このタンパク質をガの幼虫が食べるとお腹を壊して死んでしまう。
安全性評価の仕組みについては、内容によってそれぞれの視点で評価するため、それぞれの法律の下、担当の省が変わる。生物多様性への影響についてはカルタヘナ法(遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律)という法律の下、環境省と、農作物であれば農林水産省、研究目的の試験栽培であれば文部科学省、などとなる。食品としての安全性については食品衛生法、食品安全基本法、飼料は飼料安全法に基づき、安全性の評価がされる。
遺伝子組換え作物の安全性評価のしくみ
それぞれについて少し詳しく見てみる。
生物多様性影響評価は、野生植物を駆逐しないか、野生動植物や微生物などが減少しないか、近縁種が遺伝子組換え系統と交配して、交雑種に置き換わって広まらないか、など合計約100項目以上について調べ、影響がでないであろうと科学的に判断されないと、栽培や流通、輸入の許可は出ない。国内で使用等が承認された遺伝子組換え農作物は現時点では88種類ある。ただし、実際に日本国内で栽培されているは遺伝子組換えの青いバラのみで、それ以外は生産物を輸入して利用している。
食品としての安全性については、既存の品種と遺伝子組換えで作られた品種を比較、組み込んだ遺伝子の安全性、組み込んだ遺伝子から作られたタンパク質にアレルギー性や毒性がないか、食べたときに消化されるかどうか、予定外の栄養成分の変化はないかどうかなどの項目を評価する。現時点では8種類の作物で304品種が承認されている。
遺伝子組換え作物は、このように食品として安全かどうか調べられているが、そもそも、よく考えると遺伝子組換え作物でない一般農作物でも、食べる量や調理方法を間違えると毒になるものも少なくない。ジャガイモの青い部分に含まれるアルカロイドや、加熱不十分のインゲンマメなどは食中毒の原因となる。しかし、これらは食経験から食べ方などが分かっているが、遺伝子組換え技術で品種改良した作物は食経験がないので、その分、科学的に調べて、安全性を評価してから食べよう、ということになっている。
遺伝子組換え作物の利用状況
遺伝子組換え作物の面積は、年々増えており、昨年度は世界28か国、約1億8,000万ヘクタールになった。米国など先進国の栽培が中心に思われるかもしれないが、2012年以降は発展途上国での栽培面積のほうが広くなってきた。一昨年と昨年の栽培面積を比べると、昨年は少し減っているが、これは先進国における穀物価格の低下により生産調整があったためと言われている。発展途上国では、大手企業が農家に遺伝子組換え作物を栽培するように押し付けているのではないかと心配する人がいるが、実際はそういったことはない。農家さんは、きちんと収量が得られて儲けがでるように、一度栽培して良くなかった品種を次の年にも栽培することはない。もちろん、各メーカーで宣伝プロモーションをしているかもしれないが、あくまでも農家が種子を選んでいる。
栽培されている作物はトウモロコシ、ダイズ、ナタネ、ワタのほかに、海外ではナス、トマト、スクワッシュ(かぼちゃの一種)なども遺伝子組換え品種が栽培されている。
日本ではどのくらい使っているのか?現状はかなり多くの量を輸入して利用している。例えば、トウモロコシ、これはデントコーンという飼料やコーンスターチの原料となるものだが、これは年間1,300万トンほど輸入されている。輸入元の国と、その国における遺伝子組換え作物の栽培面積比率から計算すると、全輸入量の7割ぐらいが遺伝子組換えトウモロコシであると推定されている。ダイズも同様に考えると年間およそ輸入量350万トンのうち、やはり7割ぐらいが遺伝子組換えダイズと推定される。これらのダイズは油をしぼり、その搾りかすは家畜の飼料となる。納豆やみそ、しょうゆなどの原料となるダイズは、遺伝子組換えでないものだけを区別しながら輸入してきたものを利用することが多いようだ。
TTC 1階のカフェ
会場となったTTC1階のフロア
ゲノム編集技術
ここ数年で、ゲノム編集という新しい技術が育種にも利用されようとしている。
品種改良をする際、自然に起きるDNAの突然変異のほか、ガンマー線や化学薬品で突然変異を起こさせて、良いものを選んでくる。この時、DNAの変異は無作為におきる。それと比較して変えたいDNAの部分だけを変えようというのがゲノム編集技術。
ゲノム編集の方法は、特定の遺伝子のある部分に変異が起こると性質が変わる、という情報があれば、変異をおこさせたいDNAの部分を切るハサミの遺伝子を、遺伝子組換え技術で組み込み、そのハサミで切りたい箇所のDNAを切る。切った後に起こるDNAの修復の際に修復ミスが起こることがあり、それを利用して変異を起こさせる。このようにして、ランダムに起こる変異を、効率よく目的の位置だけで起こさせることができるようになる。これがゲノム編集技術のメリット。
例えば、病気に弱い遺伝子を一度切って、修復される時にミスで変異が起これば病気に強いものが得られる確率が高くなる。病気に強くなったものができれば、遺伝子組換えで入れたハサミ遺伝子は必要なくなるので、交配後代での遺伝的分離を利用して、「導入したハサミ遺伝子を取り除くことができる。最終的に出来あがった品種は、導入した遺伝子が取り除かれているため、変異を挿入したDNA配列以外は、元の品種と差がないことになる。
遺伝子組換え技術は、他の生物の遺伝子も使うことができる。このため、従来の育種ではできなかった品種を作ることができる。一方、ゲノム編集技術は作物自身が持っている遺伝子に対し、突然変異を計画的に起こさせる。その生物種以外の遺伝子利用は出来ない。この点が遺伝子組換えと異なるが、どちらも品種改良のための変異創出が目的。
現在、ゲノム編集技術を利用して、日本ではアルカロイドの毒を作らないジャガイモ、アレルゲンをつくる遺伝子を壊したコメなどの開発が進んでいる。新しい技術が利用されたものが実用化される時、消費者は、最初は不安に思うかもしれない。昔、機関車が海外からやってきた明治のころ、機関車に乗ると死ぬと実しやかに思われていていたが、実際のところそんなことはないことは自明の事。新しい技術はどのように使えばよいか、正確な情報の元に、みんなで考えていきたい。
遺伝子組換え作物についても、育種では必要なものしか開発・実用化されない。そして、安全性が確認されたものしか市場には出ない。これは先ほど説明したとおり。判断材料となる情報の正確性、公平性を見極めることがとても大事。やはり決めるのは自分自身だから。そして、絶対に反対/賛成、ではなく、相いれない意見の人もいると認め、自分の意見を他人に押し付けず、共存していくことが最も大切と思う。
話し合い
- 遺伝子組換えのテスト栽培はどのようなところで、どのようにおこなっているのか? → まずは実験室で栽培してみて、その後に隔離温室、網室という特殊な温室でデータとる。それらの試験栽培で安全性が評価され、遺伝子組換えによって追加した性質がきちんと保持されているといえるデータが得られれば、国に申請し、野外試験栽培が可能になる。一般利用を目指す場合、隔離ほ場での試験栽培において、さらに生物多様性影響評価データ取ることになる。その後、隔離ほ場での試験データをもって、一般ほ場での栽培申請を行う。このようにいくつかのステップがある。隔離ほ場はフェンスで覆われていて、たたきはコンクリート、水田の枠も土の堅い層で地下層に植物体が行かないようになっている。排水は沈殿槽に水が溜り、隔離ほ場の外に種子が出ないようなしくみになっている。 ウサギなどの小動物侵入防止のための網を、隔離ほ場の周囲に張っている。イネの場合は水田に防鳥網も張る。
- 期間はケースバイケースで、問題がなければ数年で野外栽培となる。
- 隔離ほ場で栽培した結果が悪かった場合は? → 隔離ほ場で栽培した作物の残がいは隔離ほ場内にある焼却炉で焼却処分することになる。ただし、隔離ほ場に出して栽培するものはそれまでに多くの個体から選んでおり、サラブレッドのようなものなので、隔離ほ場に出したらダメだった、という確率は低い。
- GMパパイヤの輸入許可がされているが、そもそもパパイヤ自体を自分は食べることがない。穀物などでもないパパイヤがどうして許可されたのか?対アメリカへの政治的判断なのか? → ハワイでは、パパイヤは重要な農作物。しかい、ウイルス病が蔓延し、壊滅しかけてしまった。それを救うために開発されたのがウイルス病に強い遺伝子組換えパパイヤ。ちなみに、この遺伝子組換えパパイヤが日本で承認を取るまでには長い時間かかった。政治的判断はわからないが、行政的には、輸入の申請がされればそれに対応し、手続きを進めるだけ。科学的に安全性が評価された結果、問題ないとなって承認された。万が一、押しつけがあったとしても、買うのは消費者であることをわすれてはいけない。
- 食べ物なのに特許がからむことになってしまっているが 政治的に、先に特許を取ったほうが有利になるから、大手の種子企業は遺伝子組換え作物の開発に注力するのか? → 遺伝子そのものや遺伝子の導入方法など、いろいろな特許がある。遺伝子の導入方法などいくつかの重要な特許は日本企業が持っている。また、ゴールデンライス、東南アジアやアフリカの地域で栽培を目指しているベータカロテンを含むコメだが、この開発に関わる特許は企業も放棄している。ただ、企業も儲けがでないと経営できないので、それに必要な分の特許料は取るがいずれ特許は切れるもの。また、日本の種苗会社も販売している野菜などの種子は、ほとんどが自家採取できないF1種子であることを忘れてはいけない。
- スギ花粉症を治すコメや低アレルゲンの米は医薬品になるのか? → スギ花粉症を治すコメは医薬品としての販売を目指している。また、ムコライスという遺伝子組換えコメの形をした経口ワクチンの研究が東京大学医科学研究所で進んでいるという事例もある。すでに実用化された日本発の遺伝子組換え農作物の利用としては、産総研がイヌの歯周病の薬を作る遺伝子組換えイチゴを開発、収穫したイチゴから薬の成分を取り出して、動物用医薬品として販売している。
- 従来の育種でできた農作物の安全性評価はやっていないように思う。遺伝子組換え作物だけ、これだけの内容について評価しているか? → その通り。通常の品種改良でも、新しいアレルゲンができている可能性はないとは言えないが、調べられてはいない。
- 遺伝子組換えは関心を持ちながら否定的にとらえていたが、逆に管理されているものだということに驚いた。自分が普段見ているフェイスブックのページでも、遺伝子組換えの危険性だという情報ばかり。正確な情報はなぜ目につきにくいのか? → 農水省でも以前は情報発信などの活動はしていた。他にもいくつか正確な情報発信やコミュニケーションを行っている団体があるが、それぞれがうまく連携できると、もっと良いと思う。多くの人がそのような情報にアクセスしやすくすることが、これからの我々の宿題だと思っている。また、懸念を示す大きな声だけでなく、サイレントマジョリティ、その他大勢の人々の本当の静かな声をどのように吸い上げるのか、これも重要なことと思っている。