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  • 品種改良(育種)技術の比較表を作りました

    今、ゲノム編集技術が大きな関心を集めています。この技術を使った農林水産物の研究開発が日本でも急速に進み、毒のないジャガイモ、肉厚のタイ、GABAを多く含むトマト、収量の多い飼料米などが開発されています。
    2018年8月にはこれらの環境影響評価に関する規制の検討が環境省で、9月には食品としての安全性に関する規制の検討が厚生労働省で始まっています。
    私たち、くらしとバイオプラザ21は遺伝子組換え作物・食品をめぐる情報提供や対話の場づくりを長く行ってきました。また、2013年度からは内閣府のプロジェクト(SIP)「戦略的イノベーション創造プログラム(次世代農林水産業創造技術)」の中で、ゲノム編集技術を用いた農林水産物の社会実装の調査研究に加わり、バイオカフェを開くなどゲノム編集技術に関する情報提供を行ってきました。
    その中で、参加者からゲノム編集技術と遺伝子組換え技術、従来の育種方法の違いについて知りたいとの声が多くあることを実感しました。また、農林水産分野におけるゲノム編集技術の利用と、ヒトを対象にした研究を混同して不安を感じている人たちが多くいるように思いました。
    そこで、農林水産分野におけるそれぞれの育種技術の特徴と違いが分かるような比較表を、研究者の助言を得ながら作ってみました。この表を参考にしながら、これからも皆様と、ゲノム編集を含む品種改良(育種)のこと、そして私たちの「食と農」のことを考えてきたいと思います、この表は状況に応じて内容を改訂していきます。

    品種改良(育種)技術の主な違い

    遺伝子組換え ゲノム編集 従来育種 ※1
    手法 主として他生物の遺伝子を挿入 狙った遺伝子を切断し、改変 ※2 計画的な交配
    放射線や化学物質により突然変異を誘導
    DNAの
    変化
    他生物の遺伝子を挿入するが、挿入位置は特定できない。 自己の特定の遺伝子の配列を変化させる。 親の遺伝子の組合せを変える。
    安全性審査(規制) 食品衛生法、カルタヘナ法に基づく審査あり。 環境省、厚労省で、審査をしない方向で検討中。 審査は無い。
    開発の
    担い手
    多国籍大企業 審査が不要になれば、小規模企業や大学等でも可能 公的機関、種苗会社など
    表示 原則として表示の対象 未定 なし
    開発・審査
    費用
    開発・審査に巨額な費用が必要 一般的に開発費用は少ないが、審査が必要になれば巨額な費用が生じる。※3 審査に関する費用は生じない。
    普及状況 トウモロコシ、ダイズなどが日本の国土の5倍程度で栽培。
    日本は大量に輸入・消費している。
    高GABAトマト、毒のないジャガイモ、多収米などが日本でも開発中 国内外で普及
    食経験
    歴史・時代
    20世紀の終わりから。 21世紀初めに登場 計画的な交雑育種は20世紀に入ってから。※4
    研究開発期間 ※5 8-10年 2-5年 5-20年
    ※1
    自然交雑を含む。
    ※2
    切断されたDNAが修復されるときに、数塩基の欠失・挿入が起きて、遺伝子が破壊されるケース(SDN-1)のみを対象。
    ※3
    開発期間は比較的短くなる傾向があるため、かかる費用は抑制されるが、届出(任意)のための費用が発生するかもしれない。
    ※4
    人類の歴史において品種改良が行われてきた。ここではメンデルの法則の再発見(1900年)以降について記述。
    ※5
    あくまでイメージで「もの」ができて審査が終わるまでの期間。形質によって異なる。審査に時間がかかるときがある。

    作成  特定非営利活動法人 くらしとバイオプラザ21(2018.12.19)

    参考サイト

    毒のないジャガイモ

    肉厚のタイ

    GABAを多く含むトマト

    収量の多い飼料米

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