くらしとバイオプラザ21ロゴ
  • くらしとバイオニュース
  • オンラインバイオカフェ「バイオエタノールと私たちのくらし」

    2020年11月6日、くらしとバイオプラザ21事務所より、オンラインバイオカフェ「バイオエタノールと私たちのくらし」をライブ配信しました(日本バイオ技術教育学会 協賛)。スピーカーは米国穀物協会日本代表 浜本哲郎さんでした。浜本さんは、第1回バイオカフェにご登壇いただいた、くらしとバイオプラザ21にとって、とてもご縁の深い方です。

    参考サイト

    2003年3月4日「パパイヤを壊滅ウィルスから救え!」

    写真

    事務所から配信

    主なお話の内容

    はじめに

    1980年 微生物の研究をしていたが、アメリカ大使館に勤めることなり、農務省事務所で長く働いた。当時は遺伝子組換え大豆やトウモロコシの輸入の規制の調整などを担当し、遺伝子組換えパパイヤの話をバイオカフェでお話したのはそのころ。
    米国穀物協会は、トウモロコシ、グレインソルガム、オオムギを扱っている。用途は家畜飼料(コメ、コムギは守備範囲外)で、アメリカ産穀物の世界への輸出促進を行っており、世界中に10か所の事務所がある。また、我々は非営利団体で、情報提供、市場開拓、商社の仕事の円滑化をしており、会員企業のために、穀物だけでなく、エタノールなどの穀物からできるものやその「残り」の輸出促進も行う。会員は、生産者団体、流通、穀物メジャー。

    トウモロコシ

    私たちが思い浮かべるトウモロコシは食用の「スイートコーン」で、みずみずしくて甘い。ダイズで言えば「枝豆」にあたる。飼料になるトウモロコシはイヤー(兎の耳)コーンと言われ、畑で乾燥させてから収穫する。乾物のダイズに相当する。
    スイートコーンを乾燥させてもイヤーコーンにはならない、異なる品種。イヤーコーンは使えない芯を除き穀粒(子実トウモロコシ)として流通する。子実トウモロコシからはエタノールを作るが、葉や茎も一緒に牧草として用いることもある。牧草用トウモロコシは、青刈りといって、実も茎も葉も刈り取って食べさせる。牧場でみられるベイル(牧草を播いてラップしたもの)は茎や葉もすべてベイルに入れて、発酵させてから用いる。ベイルにするものには、トウモロコシ以外にライ麦や大麦などもある。
    アメリカの生産者は、数ヘクタールから数十ヘクタールで1枚の大きな畑で、そのような畑を何枚も持っている人もいる。秋に畑で枯れたところを刈り取る。このようなコーンは南米ではフリントコーン、北米ではデントコーンと呼ばれる品種である。デントコーンとは、粒の形が(北米) 馬の奥歯の形にいているため。
    イヤーコーンは、家畜飼料、デンプン(トルティーアの原料など)、コーンウイスキー、エタノールの原料に使われており、これらの利用を拡大するのも協会の仕事。
    バイオエタノールには飲料用、工業用(食品、麺類や味噌の保存料としてのアルコール、酢酸の原料(酢の原料)、マウスウォッシュ、手指の除菌、医療用アルコールなど)、燃料用(ガソリンに混合する)がある。バイオエタノールは、トウモロコシだけでなく、サトウキビ、キャッサバ、テンサイなどからもつくられる。

    日本の燃料バイオエタノール政策

    2002年、バイオマスニッポン総合戦略が農林水産省で策定され、2012年 E10(エタノール10%を含むガソリン)を利用可能にする関連法が改正されて整備された。バイオエタノールの実証実験として、北海道や沖縄などで、作って、使ってみる実験が行われた。原料は、規格外のサトウキビ、コムギ、テンサイ、米などで、バイオエタノール10%混合ガソリン(E10)対応車もそのころから作られている。
    2015年、パリ協定で気温上昇2度以内にすることが決められ、2019年、大阪G20サミットでは脱炭素社会を今世紀後半に実現することが同意された。2020年10月には、菅首相も2050年カーボンニュートラルを達成すると言っている。
    2010年、経済産業省資源エネルギー庁は「エネルギー高度化法」で、原油換算50万キロリットルのバイオエタノールの導入を掲げた。エネルギー高度化法におけるバイオエタノール導入の目標は2017年にすでに達成され、今は2023年までこれ維持しつつ、第二世代のエタノールの開発・利用を目指している。第一世代のバイオエタノールとはデンプン質を原料とするもので、第二世代では他に利用できないバイオマス(トウモロコシの茎や葉を使うなど、セルロース系)を使う。
    日本での温室効果ガスの排出の約40%はエネルギー部門、25%が産業部門、17%が運輸部門。運輸部門ではガソリンにバイオエタノールを混ぜることで利用する。バイオエタノールを混ぜたガソリンが使えるハイブリット車や燃料電池で走る車を増やすと温室効果ガス削減に役立つ。
    温室効果ガス排出を、油田から車を走らせるまでを「WELLからWHEELまで」と言い、エネルギー高度化法では、バイオエタノールによって、その排出の55%を削減しようとしている。

    日本のバイオエタノールの市場

    ガソリンに混ぜて利用する燃料用エタノールとして、年間82.3万キロリットルのエタノールがETBEという物質に変換されて使われている。産業アルコールの需要は77万キロリットルなのでほぼ同じ量である。また、ETBE総利用量の約1割はエタノールとして輸入されて、国内でETBEに変換される。このETBEの量は日本でのガソリン全体の平均2%弱がすでにバイオエタノールになっていることになる。これがE10になれば化石燃料への依存がさらに軽減される。
    ETBE(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)とは、エタノールとイソブテンから合成され、は水と混ざりにくくガソリンに混ぜやすい。オクタン価を向上させる効果もあり、燃焼がよい。芳香族(ベンゼン、トルエン、いわゆる亀の甲羅の構造)の代用としても使えるなど使い勝手がいい。
    2020年10月現在、新潟県では、全農が米エタノールを3%いれたガソリンを作って売っていたり、愛知県と大阪府の小売業者が1%のバイオエタノールを混合したガソリンを売ったりしている。

    世界のバイオエタノールの歴史と利用

    1908年のT型フォードはDual燃料といって、ガソリンとエタノールが使える、フレキシブルな車だった。禁酒法が終わった1933年には、トウモロコシアルコールが添加されたガソリンが売り出されている。
    中東からの原油共有が細った「オイルショック」が1970年前半に起こった。1975年、ブラジルは「国家アルコール計画」でサトウキビからエタノールを作り始めた。1980年にはガソリン供給が安定し、バイオエタノールの伸びは頭打ちになるが、2003年、フレックス燃料車が導入された。ブラジルでは、0%から100%までどれだけエタノールが入っても対応できる車を製造し、これを輸出している。
    アメリカでは、1990年 「大気浄化法」ができた。これがエタノール導入の始まりの法整備となる。2000-2005年、MTBE(メタノールとイソブテンから合成)による地下水と上水の汚染が問題になり、2005―2007年、エネルギーの自立及び安全保障に関する法律ができた。現在、ガソリン消費量の10%相当量の混合が義務になっている。
    2019年、世界のエタノール生産の半分以上はアメリカで、次がブラジルで3割強をしめる。利用状況でみると、欧州ではE5からE10。ドイツ、フランスにはE75もある。ブラジルはE50以上。南米、カナダ、中国、インド、ベトナム、タイ、マアウィでエタノールが導入されている。
    アメリカのバイオエタノールの生産工場は、トウモロコシ生産地(コーンベルト)と重なっていて、地産地消の効果もある。ガソリンスタンドでの混合率は10%(E10)、15%(E15)、85%(E85)などがあるが、多くは10%。E85はフレックスビークルのみに給油できる。
    世界全体でのトウモロコシの利用先を見てみると、63%が家畜飼料、25%が食品、12%が燃料。世界のトウモロコシ約3分の1を生産するアメリカに限って見てみると、3分の1は飼料、3分の1はエタノールに使われている。

    バイオエタノール原料としてのトウモロコシ

    世界のトウモロコシの生産は、1位はアメリカ、2位は中国、そのあとブラジルと続くが、この40年でアメリカでは3倍、中国では5倍、ブラジルでも5倍以上に増大している。アメリカは輸出もしているが、中国はすべて国内消費。トウモロコシからエタノールをつくるには、デンプンをとりだし、酵素でグルコースにし、酵母でエタノールにする。デンプンはプラスチックの原料にも使われる。デンプン以外に併産されるジステラーズグレイン(タンパク、繊維、ビタミンなど)は家畜飼料に使われ、ジステラーズオイルはバイオディーゼル燃料に使われる。トウモロコシのデンプンは、トウモロコシの3分の2から得られ、これがエタノールと二酸化炭素になり、デンプン以外はジステラーズグレインやジステラーズオイルなどとして使われる。エタノールをつくるときに出る二酸化炭素はドライアイスにしたり、炭酸飲料に入れたりして利用し、すべて無駄なく使われている。

    将来展望

    単収アップ、多産地化(栽培地が増える)、供給元の多様化が進み、世界のトウモロコシ生産量は増えている。アメリカ以外にも、ブラジル、中国でもトウモロコシからエタノールが生産され始められていて、中国はE10を目指している。
    トウモロコシから燃料をつくるというと、食料にできるもので燃料をつくるのか、という議論が出てくる。バイオ燃料をつくると食料は減るのか。アメリカでトウモロコシからバイオエタノールが生産され始めた当初の2000年代前半はバイオ燃料の生産量が増えるのと比例して穀物価格、商品価格が高騰した。しかし、2008年のリーマンショック後もバイオ燃料の生産量は植え続けたが、穀物価格は下った。このことから、実は当初食料価格の高騰の「犯人」とされたトウモロコシからのバイオ燃料生産の増加は因果関係が薄いものであったことがわかる。バイオ燃料の生産が直接食料不足に結びつくことはない。
    また、アメリカのトウモロコシ作付け面積はこの70年間で1.5倍に増えたが、単収は3倍になっている。ブラジルのサトウキビ作付け面積は同じ期間に7倍になり単収は2倍。このように、トウモロコシ生産の効率化は目覚ましい。
    トウモロコシに限らず、農産物の生産量を増やすには需要の存在と品種改良が重要。売り先が確保できて価格が安定すれば、生産者には栽培・生産の動機づけ、種子の販売者には品種改良した種子の良好な市場になる。トウモロコシでは、まさにそれが起こっている。アメリカの場合、E10からE15に伸ばせれば、バイオエタノール用トウモロコシの需要が1.5倍に増える。このような需要の増加がトウモロコシの生産量増加に重要で、トウモロコシの生産量増加は食糧や家畜飼料としての供給量増加も意味している。
    トウモロコシによるバイオエタノールは、SDGsの観点でみると、7番「クリーンなエネルギー供給」、13番「気候変動対策の健康向上、産業基盤維持、陸の豊かさ(単収の増加)」、2番「飢餓をゼロに」に貢献できるのではないかと考えている。特にトウモロコシのバイオエタノール生産の利用拡大は、生産量の増加による2番「飢餓をゼロに」につながっている。

    日本ではどうか。例えば、アメリカのトウモロコシから、日本でエタノールを作りジステラーズグレインを生産できたら、国産の燃料と家畜飼料ができ、国内消費できる。トウモロコシも国産にしようとすると単価1リットル200円だったが(実証実験では1.5万キロリットルのプラント)、原料を輸入し20万キロリットルのプラントとして試算したらリットル当たり70円になった。現在、ガソリン税、石油税が免除されているが、消費税、マージンを入れたレギュラーガソリンは120-160円。70円のエタノールを使ってE10にすると今のレギュラーガソリンより安くなるかもしれない。

    質疑応答(〇は参加者、→はスピーカーの発言)

    • E85にはETBEを入れているのか。
      →85%がエタノールで15%がガソリン。ETBEは使われていない。ちなみに10%ETBEを入れるとE22になる。
    • ポップコーンとトウモロコシの種子は同じか
      →ポップコーンは爆裂種というトウモロコシの品種。
    • ブラジルでゴムの原料にトウモロコシを使うという。
      →デンプンやエタノールを合成ゴムの原料にするという可能性はある。
    • エタノールの化学式はバイオ由来でも同じだが、組換え原料由来のエタノールの食品への利用はどうか。
      →食品企業には組換えトウモロコシでないバイオエタノールを使いたいという声はある。現状では食品用アルコールのほとんどはブラジル、パキスタン産サトウキビから作られている。
    • GMトウモロコシはアメリカでも消費者から嫌われているか。
      →日本ほどではないが、たとえばウイスキー原料にGMトウモロコシを使わないという企業はある。「ジムビーム」は非組換えトウモロコシを使っている。
    • 輸入トウモロコシを取り入れた国産バイオエタノールの試算はずいぶん安くなるのに、実現しないのか。
      →実証実験では国産原料のみの利用でコストが高くなった。輸入原料を使えば安くできる。税制優遇の維持も条件にする必要があるが、日本でバイオエタノールを生産すれば、地産地消のほかに雇用創出にもなる。原油の中東依存の高さを考えれば、日本もバイオエタノールの選択肢を持つべき。
    • 日本の耕作放棄地を使えるといい。
      →実際に子実トウモロコシを生産している農家は、近所に養豚農家があってひきとってもらっている。ただ、コメからの転作補助金の点では麦や大豆を作った方がいいらしい。トウモロコシは手のかからない作物であることは確か。
    • ジスチラーズグレインの栄養価は高いのか。
      →タンパク質、ビタミン、ミネラル、繊維が含まれている。元の穀粒中には8%のタンパク質があるが、3倍の含有量に濃縮される。家畜飼料の原料の多くはタンパク質源としてダイズ粕を使っているが、ジスチラーズグレインがその代替となる。

    参考サイト

    バイオ燃料の導入に係る 高度化法告示の検討状況について

    © 2002 Life & Bio plaza 21