くらしとバイオプラザ21ロゴ
  • くらしとバイオニュース
  • コンシューマーズカフェ「食品添加物表示制度検討委員会をふりかえって」

    2020年10月23日、コンシューマーズカフェ「食品添加物表示制度検討委員会をふりかえって」をオンラインで開きました。スピーカーの全国消費者団体連絡会 事務局長 浦郷由季さんには、くらしとバイオプラザ21の事務所においでいただき、ライブ配信をいたしました。浦郷さんは2019年度に行われた食品表示制度検討委員会委員(以下 検討会)として参加され、同検討会からは2020年3月末に報告書が出されています。

    食品添加物表示制度に関する検討会報告書の公表について

    写真

    くらしとバイオプラザ21よりライブ配信

    写真

    参加者のみなさんと話し合い

    主なお話

    はじめに

    全国消費者団体連絡会は1956年に設立。全国の47の消費者団体などが会員になっており、それぞれの立場を尊重しながらゆるやかなつながりをもって活動してきた。食品だけでなく、消費者契約関連法や環境・エネルギー問題にも取り組み、消費者の立場から意見を述べたり、立法に参画したりしている。
    現在は、特定商取引法(ネット販売においてお試し購入が5回定期購入になっていたり、解約は電話のみでしか受け付けないのに電話がなかなかつながらないなど)および預託法(ジャパンライフ詐欺に代表されるような悪質販売預託商法の被害防止)の法改正に向け取り組みをしている。電力の容量市場の問題についても、最終的に消費者の負担が増えないように、経済産業省に意見書を出した。
    私は生協での活動が今の役割につながるが、生協に入ったきっかけは、食の安全など生協それぞれがもっている方針というより、転居先のマンションで生協の共同購入を仲良くしている人たちに仲間入りしたかったからだった。そして、どっぷり組合員活動に16年間、関わることになり、今に至る。生協というと、食品の安全性にこだわりがあると思われがちだが、実際には宅配が便利だから入っている人もおり、無添加・無農薬にこだわる商品ばかりではなく、幅広い商品の取扱いがある。

    消費者の食品添加物についての認識

    検討会で消費者意向調査が紹介され、そのアンケート結果から、表示をみる人は多いことがわかった。
    無添加、不使用を確認している人がいることが想像される。一括表示では原材料と食品添加物は「/」で分けて表示しているが、何が添加物かわかっているだろうか。原材料名にも○○エキスなど、一見してわかりにくい物があるが、理解されているだろうか。さらに括弧書きが増えて、表示はますます複雑になってきている。
    同じアンケート結果から、国に認められた食品添加物だけが使用されていることを知らない人が意外と多いことを知った。
    私自身は、食品添加物を気にしすぎたら食べ物がなくなるのではないか程度に考えている状態で生協に入った。入ったころは、無塩せきハム(亜硝酸ナトリウム不使用)は色が悪くて買わなかったが、勧められて無塩せきハムを買ううちに今ではハムの鮮やかなピンク色のほうが気になるようになった。一方、生協では発色剤 亜硝酸ナトリウムを使わないことを強調するが、亜硝酸ナトリウムには、抗菌作用があるので使われてきた歴史があることはよく知らされていなかった。
    消泡剤を使わない豆腐が生協から売り出された。消泡剤不使用を強調してお薦めしていたが、消泡剤の安全性やこれがないと豆腐づくりがどれだけ大変かは知らなかった。 生協はオリジナルのCOOP商品を出していて、食品添加物を使わないことをセールスポイントとすることもあるのに、食品添加物自体の役割を学ぶ機会は少なかった。全国消団連の事務局長になり、厚労省の委員にもなって、食品添加物の役割をよく学ぶことになった。
    味の素(株)が主催した「食と健康の未来フォーラム」(以下 フォーラム)で紹介された街頭インタビューでは、「無添加」を選ぶと答えた人が多かった。「無添加は健康によさそう」というと言い訳が楽だったり、「添加物のことは気にしない」という自分の見え方が気になったりしているのではないかと思った。このフォーラムでは、「添加物への警戒心と無添加の無警戒」という言葉が印象に残った。無添加というだけで安心するのはいかがなものか。

    無添加 不使用表示

    検討会では、消費者意向調査の結果が紹介された。「無添加」「食品添加物不使用」と表示された食品を選ぶ人が半分以上で、多くの人はどのくらいの量が使われているかを知らなかったり、昔の健康被害の記憶が強く残っていたり、食品添加物の役割を知らなかったりするように感じた。このようなイメージは仕方ないかもしれないが、「無添加」「不使用」を製品の目立つ場所に任意表示する事業者がいて、これは食品添加物を誤解させると思った。
    多くの公正競争規約で単なる無添加の表示は許していないが、味噌にはそのような基準がない。無添加は出し入りみそと区別するためという話があったが、消費者のためには、「だしなし味噌」「だし無添加」と書くべきだと思う。
    「保存料不使用」と書かれているときは、保存料のソルビン酸を使っていないことを表している。ソルビン酸をいれなくてもPh調整剤で保存効果をあげているケースはミスリードを招くのではないか。むしろ、出来立てをすぐに食べないことを前提として製造されるコンビニ弁当では、保存料なしの方がこわいのではないかとも思う。しかし、保存料不使用にひかれる消費者は多い。保存料を使わず同じ効果のものを入れていることは、ある意味消費者をだましていることになり許せないと思う。
    「無添加」は消費者の要望で表示しているという企業がいる。一括表示を加工食品の裏面でみるより、表面で自分が知りたいことが書かれていると、買う人は便利かもしれない。表面の無添加の強調表示を消費者の要望という理由で行うのは、消費者のためになっているのだろうか。消費者が求めているのは食品添加物の役割をきちんと教えてくれることではないだろうか。消費者ときちんと向き合ってほしい。だから、無添加ガイドライン策定に期待している。何が無添加なのかがわからないような表示をしないでほしい。

    消費者にできること

    食品添加物に対する消費者のリテラシーを高めることは可能ではないか。科学的知識を身につけ、正しく理解すること。自分自身、検討会の委員になって、何度も食品添加物の勉強をしてやっとわかってきた気がする。
    そうはいっても、私たちには、ネットショッピングでの消費者契約についてや、遺伝子組換え、放射能など勉強することはたくさんある。発信する側は、専門知識のない人にわかることばで発信してほしい。そして、消費者が「情報の受け取り方」を学ぶことも重要。ネットなどで情報が溢れている中、自分はどのように情報を受け取っているだろうか。見出しをみて勘違いしたり、早とちりしたりしていないだろうか。人は心地よい情報ばかりを集めやすいことも自覚しなくてはならない。
    フォーラムのまとめで、「そ(即断するな)」「う(鵜呑みにするな)」「か(偏るな)」「な(中だけ見るな)」というポイントが示され、「そうかな」と一度立ち止まって考える必要性が言われたが、そのとおりだと思う。

    学校給食衛生管理基準について

    検討会で、学校現場での添加物の扱いについて、資料として学校給食衛生管理基準が提示された。
    「有害もしくは不必要な添加物を給食で使用しないこと」という文言がある。有害ということばが入っている意味を文科省に尋ねたが、文科省から検討会への参加も回答もなかった。報告書の中に、学校給食衛生管理基準について議論されたこととして加えられた。
    私は検討会終了後に、「有害ということばが入っていること」について、検討会で賛同してくれた6名の委員と連名で質問書を文科省に提出し、2020年7月9日、文部省と懇談の機会を持つことができた。同省初等中等教育局健康教育・食育課が対応してくれた。この基準は平成9年、腸管出血性大腸菌食中毒が起こったときに作られた基準で、この文言が入った理由はわからないそうだ。「食品添加物は国の基準を満たしたものだけが流通していることを前提とし、食品添加物を使わないようにいっているのではない。ポストハーベストなどを特定しているわけではない。有害もしくは不必要な食品添加物がもしもあったとしたら、使ってはいけない」という意味だと説明された。
    自治体の学校給食担当者の集まる場ではこの文言の解釈は口頭で説明している。法律に位置付けられた文言なので、解釈を明記することはできない。法律に書き込まれた文言を修正するには国民の意見も聞かなければならない。またHACCPの考え方はすでにこの基準に包含されており、基準を当面見直す予定はない。この基準に改正の必要が出てきたらこの面談でも意見を聞いたので、見直すかどうかを議論にあげるとのこと。私たちの意見は受け止めていただけなかったと感じている。これは根気強く話しあっていくべきことだと思う。この文言によって、栄養士や家庭科の先生が、食品添加物を誤解していることが危惧される。

    話し合い(〇は参加者、→はスピーカーの発言)

    • 「そうかな」の「な」について
      →スポットライトのあたっている「中」だけでなく、隠れているものが何か考えてよく見るという意味。
    • 給食基準の話はのれんに腕押しの印象を受けた
      →国会議員などのキーパーソンに働きかけたい。
    • 無添加のガイドラインではどのような表示が対象になるのか
      →一括表示の枠内はもちろん、包装材すべてが対象になる。私は広告も対象になるといいと思っている。消費者委員会表示部会でも宣伝、広告も対象にすべきという意見は出ている。
    • 無添加表示は景表法で取り締まるべき。

    浦郷さんのむすびのことば

    「周知啓発が重要。消費者教育も大事だが、学校教育で扱ってほしい。行政には、いろいろな人に伝わるリスクコミュニケーションのやり方を考えてほしい。それは、私たちもやっていかなくてならないと考えている」

    © 2002 Life & Bio plaza 21