くらしとバイオプラザ21ロゴ
  • くらしとバイオニュース
  • 大学生・大学院生とステークホルダー会議開催

    2020年度は、新型コロナウィルス感染症拡大のために、これまでのようにロールプレイをとり入れたワークショップ「ステークホルダー会議」を開くことができなくなりました。
    それでも、大学生、大学院生と、遠隔でステークホルダー会議を行う機会を得ました。

    1.神奈川工科大学大学院

    2020年11月11日、同大の院生のみなさんと、ゲノム編集技術で開発されたGABA高蓄積トマトを例に、話し合いました。ブレイクアウトセッション機能を使って、生産者、流通、消費者の3つの立場のグループに分かれて、GABA高蓄積トマトを使うか(食べるか)に対して、YESかNOの意見をまとめました。グループの代表の発表を、図1のように、映写画面に記入していきました。オンラインでのステークホルダー会議は、ブレイクアウトセッション、チャット、挙手など、いろいろな機能に慣れている院生に助けられて、無事に終えることができました。

    GABA高蓄積トマトを使うか(食べるか)に関するグループ討議の結果

    立場 YESの理由 NOの理由
    生産者 ストレス社会を生きる人々に貢献したいから  
    流通 健康維持向上には関心を持つ消費者が多いと思うから  
    消費者 健康維持向上には関心を持つ人が多いと思うから  

    3つのグループともに、YESという意見でした。これまでもステークホルダー会議を行ってきましたが、GABA高蓄積トマトを取り上げたのは初めてでした。また、YESの理由が、健康の維持・増進であったのも初めてでした。

    2.新潟食料農業大学

    新潟食料農業大学

    2020年11月18日、同大の学部のみなさんと、ゲノム編集技術で開発されたソラニンのできないジャガイモを例に、話し合いました。はじめに、東京から講義のライブ配信を行い、同大では、受講生が17グループに分かれて、ソラニンのできないジャガイモを使うか(食べるか)に対して、生産者、学校給食調理員、ポテトサラダ製造販売業者、消費者の4つの立場に分かれて話し合い、YES、NOの意見をまとめました。グループの代表の発表を、図2のように、映写画面に記入していきました。会場では17ものグループが同時、討議を行いましたが、会場での早川喜郎先生、丸山純一先生のご指導のお蔭で、順調に進みました。グループの代表者が順に前にでてきて、意見を発表してくれました。

    ソラニンの出来ないジャガイモを使うか(食べるか)に関するグループ討議の結果

    立場 YESの理由 NOの理由
    消費者1 食中毒リスクが低減する。価格が安定し生産しやすい  
    消費者2 品種改良で生産性が向上することは、消費者メリットになる  
    消費者3 責任ある生産・流通があれば食べる。食中毒のリスク低減  
    消費者4 食中毒のリスク低減  
    学校給食1 大量に安く入手できる。食中毒のリスク低減  
    学校給食2   保護者への説明が必要。生徒への影響の不安
    学校給食3 小中学生にたいして、身近にゲノム編集技術を伝えられる  
    学校給食4 食中毒のリスク低減  
    ポテトサラダ製造販売1 生産性が高い。イメージ向上が重要  
    ポテトサラダ製造販売2   安全性に不安
    ポテトサラダ製造販売3 品質向上し大量生産できる。信頼が向上することで安全性が理解される  
    ポテトサラダ製造販売4 生産量アップ、加工しやすい。安全だから  
    ポテトサラダ製造販売5 食中毒リスク低減。プロダクトは同じだから(食べれば同じ)  
    生産者1 大量生産。中毒リスク削減  
    生産者2   環境に悪影響がありそう
    生産者3   消費者理解が得られない。生産コストが高そう
    生産者4   研究員が少なく、開発が進まない。環境に悪影響が不安

    17のグループのうち、12のグループがYESという判断をしました。その理由の大部分は食中毒のリスクが削減できることでした。

    日本で開発されたゲノム編集作物1号となる、GABA高蓄積トマトの届出が2020年12月11日に厚生労働省によって承認されました。これまでは、実物がいつできるかわからなかったので、想像しあいながらステークホルダー会議を行ってきましたが、これからは、届出の状況をみながらより幅広い意見が引き出せるように、ステークホルダー会議のやり方も見直し、改善していきたいと思います。

    © 2002 Life & Bio plaza 21