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  • 「ゲノム編集食品に関するオンライン学習・意見交換会」開かれる

    2022年2月19日、生活協同組合ユーコープによりゲノム編集食品に関するオンライン学習・意見交換会が開かれました。
    初めに学習会があり、大阪府立大学 山口夕准教授により話題提供がありました。後半は生活協同組合ユーコープ 組合員参加推進部長 三枝みさ子さんのファシリテーションのもと、3名の組合員理事とくらしとバイオプラザ21 佐々義子が加わり、トークセッション・質疑応答を行いました。

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    プログラム

    開会のことば

    初めに三枝さんより開催趣旨が説明されました。「ユーコープでは2019年にゲノム編集食品に関する声明を出した。①ゲノム編集食品の国への届けには抜けや漏れがないようにしてほしい、②表示によって消費者が選べるようにしてほしい、③国による消費者へのわかりやすい説明や学習会を繰り返し行ってほしい。これらの3点をお願いしたが、状況は改善されていない。今日の目的はゲノム編集食品の正確な知識を深めることで、結論をだすことではない。事前に多くの質問をいただいたので、山口准教授にもたくさん織り込んでお話しいただく。チャットにも質問を積極的に記入してほしい。事後アンケートにもご記入いただき、質問や感想は今後の活動に活かしていきたい」

    学習会「ゲノム編集食品とは何でしょう」

    大阪府立大学 生命環境科学研究科 准教授 山口夕氏

    (1)食べ物はどうやって作られてきたか

    遺伝子は目に見えないが、例えば日本にある1000以上のお米の品種のおいしさ、栽培しやすさなどの違いは遺伝子の違いから来ている。
    うるち米ともち米を例にみてみると、この二つの米の食感の違いはでんぷんの違いからもたらされる。そこで遺伝子を調べると、もち米の持つWaxy遺伝子が変化して、dアミロースというお米をさらさらさせるようなデンプンが合成されずにもちもちになっていることがわかった。
    古代から、私たちは自然放射線などによってできたよい品種(自然突然変異)を選び出してきた(選抜育種)が、19世紀になってよいものを計画的に掛け合わせること(交配育種)ができるようになった。昭和19年に開発が始まり昭和30年に誕生したコシヒカリは、日本で初めて交配育種でできた「陸羽132号」(20年かけて開発され、1921年にできた)を祖父に持って掛け合わせでつくられた。交配育種や選抜育種の時代には技術的に遺伝子を確認できなかったが、よい品種は作り出されていた。また、交配育種は選抜育種より効率的になったが、十年以上の年月が費やされる。
    技術は進み、放射線や化学物質をつかって人工的に突然変異体をつくれるようになり(人為突然変異)、コシヒカリに突然変異を人為的に起こし、選抜してミルキークイーンができた。これには約10年かかった。人為的突然変異は、紫外線、放射線、化学物質、組織培養などによって起こすことができ、今、食べているものの多くも人為突然変異育種で作られているといえる。
    まとめ:よい自然突然変異を選んできた「選抜育種」から、掛け合わせでよいところを集積した作物が得られるようになり(交配育種)、人の手で遺伝子に変化を起こして(人為突然変異)よい作物がつくれるようになった(突然変異育種)。効率化は進んでいるが、10年単位の時間と労力が求められる作業である。

    (2)ゲノム編集技術

    ゲノム編集技術は2020年代の人為突然変異を利用する技術で、現在、最も使われているゲノム編集技術のひとつであるクリスパーキャス9は、2013年に生まれ、2020年にはノーベル賞を受賞している。
    ゲノム編集技術では、ガイドRNAがねらった配列を探し出してDNA切断酵素が切る、修復されるとまた切る、を繰り返す。すると何度も切られるうちにそこに修復ミスが起き、目的とする変異が入ったものを選ぶ。この選抜プロセスにも時間と労力がかかって、その後に栽培試験。品質検査が続いていく。このようなプロセスを経て、トマト、タイ、フグが実用化に至った。

    (3)遺伝子組換えとの違い

    遺伝子組換え技術は1990年代に生まれ、外から遺伝子を入れる技術。ゲノム編集は都合の悪い、元から持っている遺伝子を壊すが、遺伝子組換えでは外から入れる。例えば除草剤に反応しないようにバイパスが作ることで、除草剤をかけても枯れない作物ができる。
    ゲノム編集技術でできたものは、従来育種でできたものと区別ができないので、遺伝子組換え作物に求められる安全性確認を求めることができず、届け出・情報公開となる。最終製品で従来育種と区別できないということは、根拠がないので、義務表示の対象にはならない。
    遺伝子組換えには不安を感じている人も少なくないと思うが、20年間、問題は起こっていない。
    育種の歴史と種類についてお話したが、最終的には、消費者が選ぶかどうか、消費者が選ぶから生産者や事業者が使う、選ばれたものが残っていくのだと思う。

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    トークセッションメンバーと総司会 ユーコープ 滝沢大輔さん

    トークセッションと質疑応答

    3名の組合員理事から、ゲノム編集食品に関して「子どもが食べても大丈夫か」「デメリットはないのか」「遺伝子組換えとの違いが分かりにくいのでもう一度説明してほしい」「オフターゲットというのはリスクがあるのか」などの質問があり、山口氏、佐々が回答しました。
    参加者からのチャットには、「食品を購入するときに注意するとよいことはあるか」「教育におけるゲノム編集技術の扱いについて」などの質問があり、佐々が回答しました。
    最後には登壇者全員で感想を言い合うことができました。これからも、ゲノム編集を含む育種について話し合ったり、共に考えたりしていきたいと思いました。

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