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  • ifia2022リスコミセッション 「食品添加物表示の見直しと不使用表示ガイドライン」

    2022年5月19日ifia2022 食品添加物において、リスコミセッションをひらきました。
    お話はFood Communication Compass代表 森田満樹さんによる「食品添加物表示の見直しと不使用表示ガイドライン」でした。
    2022年3月食品添加物の不使用表示に関するガイドライン(以下 GL)が公開されました。GL策定までの経緯と概要についてお話いただきました。

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    森田満樹さんのお話

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    立ち見の参加者もいたセッション会場

    主なお話の内容

    1. ガイドライン策定までの経緯


      2015年食品表示法が施行されて、原料原産地表示、遺伝子組換え食品表示と順々に表示の見直しが行われてきた。
      食品店添加物表示制度に関する検討会が2019年から2020年にかけて行われ、報告には以下の5つのポイントが挙げられた。

      • 物質名、一括名等で表示する現行制度を維持する。
      • 無添加表示・不使用表示の表示に対して、表示禁止事項を明確化するガイドラインをつくる。
      • 消費者の誤認を防止する観点から「人工」「合成」の用語を削除
      • 栄養強化目的の添加物の表示については、原則すべての加工食品に表示する方向で検討を進める
      • 行政、消費者、事業者は連携し、食品添加物や表示について普及啓発を進める。
    2. 食品添加物の不使用表示関するガイドラインの概要

      前述の「食品添加物表示制度に関する検討会」の報告書(2020年3月公表)でガイドライン策定が提案され、2021年3月から2022年3月にかけて「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会」が開催された。ガイドラインは3月30日に公表された。
      GLは、消費者庁ウェブサイトの「食品表示法等(法令及び一元化情報)」の法令・政令・府令等の「食品表示基準Q&Aについて」の「別添」として公表された。つまり、Q&Aと同様に、遵守が求められる事項として位置づけられる。
      ガイドラインは全9pで構成されており、その内容を紹介する。

      (1)背景及び趣旨

      ガイドラインが作られた背景については前検討会の報告書の内容が紹介され、そのうえで食品表示基準第9条(表示禁止事項9の第1号(優良誤認させる)、第2号(表示すべき事項の内容と矛盾する用語)、第13号(内容物を誤解させる文字、絵、写真など)に該当するおそれが高いと考えられる表示について、メルクマールになるGLが取りまとめられた。後述する10の類型は第1、2、13号のどれかに紐づいている。
      そのうえで、「本ガイドラインは、食品添加物の不使用表示に関して、消費者に誤認等を与えないよう留意が必要な具体的事項をまとめたものであり、食品添加物の不使用表示を一律に禁止するものではない。食品関連事業者等が、食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に当たるか否か自己点検を行う際に用いることができるものである。」と位置付けられた。

      (2)適用範囲

      GLの対象になるのは、一般用加工食品の容器包装に限定されており、生鮮食品は適用外である。WEBやポップ等について、消費者庁は検討会最終回で「ウェブや広告は対象としていないが、このガイドラインを参考にして容器包装外における消費者を誤認させる食品添加物の不使用表示が縮減されることが期待される」と述べている。

      (3)食品添加物の不使用表示の類型及び食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる表示

      無添加、不使用表示については店頭で様々な表示が行われているが、このうち注意すべき食品添加物の不使用表示を10の類型に分けた。なお、これらが食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に該当するおそれがあるか否かは、類型に当てはまることだけではなく、商品の性質、一般消費者の知識水準、取引の実態、表示の方法、表示の対象となる内容などを基に、ケースバイケースで全体として判断するものである。

      類型1 単なる「無添加」の表示
      消費者に対して何が無添加かわからない表示。内容物を誤認させる恐れがあるので、第13号に該当するおそれがある。

      類型2 食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示
      前述の検討会を受けて、食品表示基準について「人工」「合成」との用語は削除している。食品添加物については安全性において、人工も天然等を区別しておらず、こうした表示が消費者に良い・悪い印象を持つ場合、第1号の優良誤認に該当するおそれがある。

      類型3 食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示
      法令上、当該食品添加物の使用が認められていない食品への無添加あるいは不使用の表示は、第1号の優良誤認にあたるおそれがある。たとえば、清涼飲料水にソルビン酸不使用と表示する場合、清涼飲料水にソルビン酸を使用しては使用基準違反であり、実際にはありえないのにこうした不使用表示をするようなケースをいう。

      類型4 同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示
      たとえば、保存料不使用と書きながら、保存料以外の日持ち向上目的でpH調整材を使っているような類似機能を持つ食品添加物を使用した場合は、第1号に該当するおそれがある。

      類型5 同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示
      たとえば、原材料としてアミノ酸を含有する抽出物を使用した食品に、添加物として調味料を使用していない旨を表示するような場合は、第1号に該当するおそれがある。

      類型6 健康や安全と関連付ける表示
      食品添加物は、安全性について評価を受け、人の健康を損なうおそれのない場合に限って国において使用を認めている。事業者が健康及び安全について科学的な検証を行い、「添加物を使っていないから安全」「健康」などと関連付けることは困難であり、第1号に該当するおそれがある。

      類型7 健康、安全以外と関連づける表示
      「添加物を使っていないのでおいしい」など、おいしい理由と不使用表示の因果関係を説明できない場合は、第1号に該当するおそれがある。また、「保存料不使用なのでお早めにお召し上がりください」など、開封後に言及せずに表示をすることで期限表示よりも早く喫食しなければならないという印象を与えた場合は、第2号(表示すべき事項の内容と矛盾する用語)に該当おそれがある。また、「着色料不使用使用のため変色する可能性があります」という表示で、変色と着色料の用途の関係について説明できない場合は、第3号に該当するおそれがある。

      類型8 添加物の使用が予期されない食品への表示
      たとえば、同種の製品で一般的に着色料が使用されておらず、かつ、食品元来の色を呈している食品に「着色料不使用」と表示する場合など、消費者が、通常、当該食品添加物が使用されていることを予期していない食品への無添加あるいは不使用の表示は、第1号に該当するおそれがある。

      類型9 加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への表示
      もともと食品表示基準Q&Aで、キャリーオーバー、加工助剤として食品添加物を使っているのに、不使用表示をすることはできないとされていた。それも含めて、原材料の製造工程において食品添加物が使用されていないことが確認できないため、自社の製造工程に限定する旨の記載と共に無添加 あるいは不使用を表示と書くことも第13号に該当するおそれがある。

      類型10 過度に強調された表示
      容器包装のあらゆる場所に過度に強調して不使用表示を行うことや、一括表示欄における表示と比較して過度に強調されたフォント、大きさ、 色、用語などを用いることが、消費者が一括表示を見る妨げとなり、表示上の特定の食品添加物だけでなく、その他の食品添加物を全く使用していないという印象を与える場合、内容物を誤認させるおそれがある。何か所にも書くことや、目立つ色や大きな字で書くことは、第13号に該当するおそれがある。

      (4)普及啓発

      本ガイドラインは、食品関連事業者が第9条の禁止事項に当たるか否かを自己点検できるものであり、これによって表示禁止事項に該当する恐れが高い食品添加物の不使用表示が防止されることが期待される。あわせて、食品添加物に関する制度や知識を深めることも重要である。

      (5)本ガイドラインに基づく表示の見直し

      GL公表後2年程度(令和6年3月末まで)の間に、適宜、表示の見直しを行うことが求められるが、パブコメの意見を受けて「この期間に製造・販売された加工食品が見直し前の表示で流通することはやむを得ないと考える」とされた。

    3. まとめ

      今回のガイドラインは、2019年の検討会から数えて3年がかりで策定されたものである。ガイドラインだから拘束力がないという人もいるが、実際にはQ&Aの別添として位置付けられており、遵守すべき内容である。
      ガイドラインは、無添加・不使用表示を一律に禁止したものではなく、10の類型に当てはまらないように、消費者の誤認を招かないように配慮が必要となる。実際に違反かどうかは、類型に当てはまることだけでなく、ケースバイケースで判断されることになる。
      今回のガイドラインを国が示したことの意義は大きい。消費者が無添加を求めるので、商品の差別化するための「無添加・不使用表示」は必要という方もいるが、強調表示が誤認を招くことにつながるという気づきを示し、見直しを求めるものである。食品関連事業者はコンプライアンスを遵守して、適切な表示と情報提供をお願いしたい。

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    開場前、セッション会場には長い行列が。

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    セッション前にブースで打合せ(ブースは食の安全安心を科学する会 SFSS、食品安全情報ネットワーク FSINと一緒に出しました)

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