くらしとバイオ Q&Aコーナー
くらしとバイオプラザ21では、開催したイベントにおいて寄せられた質問や事務局へのお問い合わせに対して、できるかぎりお応えしながら今後ともこのQ&Aコーナーを充実させていきます。
- 1バイオコミュニケーションってどういうことですか。
- 1バイオテクノロジーは、予防医学・医療・医薬、環境浄化、食料増産・機能性食品開発などに期待される一方、遺伝子組み換え作物の安全面や、人が遺伝子操作をすることの倫理面等で不安や不信感を持っている人も少なく有りません。
高度な科学技術研究の成果としてのバイオテクノロジーはその公開される情報も一般の市民には専門的過ぎたり、偏りが有ったり、一方通行で市民が本当に聴きたいことには充分答えられていなかったりとコミュニケーションのすれ違いが起こっていることもまま有ります。
より一層幅広い展開が予想され、くらしと身近になってきたバイオテクノロジーを市民が正しく理解し判断し選択するためには、市民からも本当に知りたいことをもっと伝えて、その疑問や不安を解きほぐすための情報提供がなされることが必要です。
バイオについて市民と国や企業、学会、マスコミ等関係者がさまざまに意見や情報を交換しあうことで相互が理解しあい、結果として初めて冷静に市民はバイオをどう選びどう行動するかを決めることが出来るのだと思います。私たちはこれをバイオコミュニケーションと呼んでいます。 - 2遺伝子組換え食品の安全性の問題などバイオについては余り良いイメージがありませんが、バイオ技術の有用性、安全性(危険性も含めて)などを客観的に知りうる方法はどんな方法があるでしょうか。
- 2下記の図書及び発行団体・問合せ先を紹介します。
- 厚生労働省ホームページ
遺伝子組換え食品Q&A
厚生労働省医薬局食品保健部(平成13年7月改訂、改訂第7版) - 発行図書「遺伝子組み換え農作物を知るために」平成14年4月
社団法人 農林水産先端技術産業振興センター「STAFF」
(問合せ先)社団法人 農林水産先端技術産業振興センター
〒107-0052 東京都港区赤坂1-9-13 三会堂ビル7階
TEL:03-3586-8644、FAX:03-3586-8277
- 発行図書「組み換え農作物早わかりQ&A」平成14年4月
農林水産省農林水産技術会議事務局
(問合せ先)農林水産省 農林水産技術会議事務局 技術安全課
〒100-8950 東京都千代田区霞が関1-2-1
TEL:03-3502-8111 内線5096、5098
- 発行図書「遺伝子組換え食品から環境まで〜もっと知りたい人のために〜バイオテクノロジーQ&A」2000年3月
財団法人バイオインダストリー協会
〒104-0032 東京都中央区八丁堀2-26-9 グランデビル8F
TEL:03-5541-2731 FAX:03-5541-2737 - 発行図書「遺伝子組換え食品から環境まで バイオテクノロジーQ&A」2000年3月
財団法人バイオインダストリー協会
問合せ先は同上 - くらしとバイオプザ21 お役立ちリンク集
一般市民向けのバイオに関するHPを数多く取り上げ、テーマ別に見やすく整理しています。なるべく多くのHPに目を通していただくことで、客観的な見方ができると思います。
- 厚生労働省ホームページ
- 3遺伝子組換え作物のリスクとはなんですか?(食べても大丈夫なのかなという漠然とした不安はありますが)
- 3最初に、これまでに実用化された主な遺伝子組換え農作物の実例は、以下のとおりです。
- 害虫への抵抗性を持たせた農作物(トウモロコシ、ワタ、ジャガイモ他)
- 除草剤の影響を受けない農作物(ダイズ、トウモロコシ、ナタネ他)
- 従来のものと組成、栄養価等機能性を付加した農作物(ダイズ、トマト)
- 病気に強い農作物(パパイヤ、スクワッシュ)
- 殺虫タンパク質の人への影響:
例えば、土壌微生物Bacillus thuringiensisはBtタンパク質をつくり、鱗翅目などの昆虫(例 アワノメイガ)がこれを食べると死にます。この微生物は生物農薬として古くから使われてきました。植物にこのBtタンパク質を作る遺伝子を組換えにより導入し、組換え作物を生産しています。このBtタンパク質の人への影響については次のような結果が得られています。
このBtタンパク質は、昆虫では消化器内がアルカリ性で、アミノ酸まで分解されずペプチドまでにとどまり、このペプチドが腸管細胞の受容体と結合するため、腸管細胞が破壊され栄養素を吸収できなくなり死にいたりますが、人では、人の胃の中は酸性であるため、変性し、消化酵素ペプシンにより切断され、最終的にはアミノ酸にまで分解され、アミノ酸として、他の栄養素と同様に吸収され、有害作用はありません。 - 環境への影響:
・ 例えば、除草剤耐性遺伝子を持った植物の花粉が同種及び近縁の植物に伝播し、これらの植物が除草剤耐性を獲得し、除草剤が効かなくなるリスクが考えられます。これまでの結果では、遺伝子組換え技術によって栽培されているダイズ、トウモロコシ、ナタネは交雑などにより雑草化しにくいことが明らかとなっています。
・ EPA(アメリカ環境保護局)は、殺虫タンパク質の耐性を増強させないコーンおよびワタの栽培法として「High Dose refuge/strategy(高用量保護区戦略)を行うことを義務つけている。たとえば、殺虫タンパク質濃度は、アワノメイガ感受性の99%が死滅する濃度の20倍以上の組換え体とし、殺虫タンパク質を導入した組換え体を栽培するときには、20%の非組換え体も同じ農場に栽培すること。
- http://www.uky.edu/Agriculture/Entomology/entfacts/fldcrops/ef140.htm
- http://www.news.wisc.edu/view.html?get=8026
- http://ccr.ucdavis.edu/biot/html/new/epa.html
- 選択遺伝子(抗生物質耐性遺伝子)の腸内細菌への伝播の心配:
遺伝子組換え体を選別する目印とした選択遺伝子(抗生物質耐性遺伝子)が腸内細菌に移行することにより、腸内細菌が抗生物質耐性を獲得するのではないかというリスクがあります。このリスクに関しては、植物中の抗生物質耐性遺伝子は、通常の食物中にある遺伝子と同様に、消化管において短時間で分解(消化)されてしまい心配はありません。尚、実際に、抗生物質耐性遺伝子の入った除草剤の影響を受けないダイズ、ナタネ、害虫に強いジャガイモが米国、カナダ、英国等で食卓に上がっていますが、いずれの組換え食物についても人の健康に対する影響は報告されていません。 - アレルゲン性タンパク質(アレルギーにもとになるタンパク質)の出現の可能性:
アレルゲン性タンパク質の出現の可能性に関するリスクは、組換え食品のすべてを動物試験やアレルギー試験をする必要はないと考えられています。たいていのアレルゲンは共通の特徴を持ち、導入する遺伝子の素性から、アレルゲンになるかどうかはほぼ確実にわかっているし、ある食品で大丈夫であったタンパク質が、ほかの食品でアレルゲンになったりしないことは明らかです。他方、目的とする遺伝子以外の遺伝子の発現によるアレルゲン性のタンパク質の出現については安全性試験でチェックする必要があります。
また一方、遺伝子組換え技術を利用することにより、天然のアレルゲンを押さえ込める可能性もあります。例えば、アレルゲン性タンパク質を作るブラジルナッツの遺伝子を改変して、そのアレルゲン性タンパク質のない品種になるかもしれません。
文献:
「遺伝子組換え食品 どこが心配なのですか?」 P178
平成14年7月20日
(Alan McHughen 著 渡辺 正、久村典子 訳 丸善株式会社)
- 厚生労働省 遺伝子組換え食品Q&A
- 4国内外の遺伝子組換えの市場化、開発の現状について教えてください。
- 4日本の市場に出回る遺伝子組換え農作物は厚生労働省の安全性審査を通過した農作物で、それらはジャガイモ、トウモロコシ、ナタネ、ワタ、ダイズ、テンサイ、色変わりカーネーションなどです。
- 安全性審査の手続を経た遺伝子組換え食品及び添加物一覧、平成14年10月1日現在
医薬品では遺伝子組換え動物細胞や遺伝子組換え微生物を用いて生産され、医療に貢献しているものがあり、主なものはインシュリン、インターフェロン、エリスロポエチン、TPA等です。
国内で研究されているものとしてはイネ、キュウリ、メロンなどの農作物のほかに、効率よく土壌などの汚染物質を分解する微生物、医薬品の原料となる物質などを体内で作る昆虫、早く育つ樹木、害虫に強いアズキなどがあります。また海外を含めると、医薬品や食料増産を目的とする基礎研究に用いるために開発されている遺伝子組換え生物(マウス、ラット、タバコ、シロイヌナズナなど)もあります。市民の生活向上に直接利益をもたらす栄養価を高めたコメ(ゴールデンライス)のような製品、下痢性大腸菌、コレラ、肝炎ウィルスに対するワクチンの効果のあるバナナ、ジャガイモなどの研究も進められています。
出典:
- 農林水産省組換え農作物早分かりQ&A
- 遺伝子組換え植物(GMO)の安全性確認状況
- 5遺伝子組換え食品は安全ですか。副作用などはありますか。
- 5食品は永い食経験を経て安全でおいしく扱いやすく栄養価の高いものが選ばれてきていますので、副作用ということばを用いることは適切ではありません。「副作用」ということばは通常は医薬品に対して使われる用語で、医薬品の有害作用をさして言います。
ここでは、「遺伝子組換え食品は従来の食品にくらべて、望ましくない作用がヒトの体にあらわれるのではないか」という声がよく聞かれますので、厚生労働省の定めた安全性評価について説明します。
- 遺伝子を組み換える前の農作物は安全に長く食されてきたものかどうか
- 組み入れる遺伝子は食べても安全なものであるか
- 遺伝子を組み換えたために新たに作られるたんぱく質は食べても安全なものであるか
- 遺伝子を組み換えたために新たに作られるたんぱく質は毒性をもっていないか
- 遺伝子を組み換えたために新たに作られるたんぱく質がアレルギーを起こす恐れはないか
- 新しくできた農作物の栄養成分は組換えた部分以外は前と同じか
などの項目が細かく調べられて、従来の食品と変わらないと判断されたものだけが審査に合格しており、明らかに悪い影響を起こすとわかっているものはこの時点で除外されるしくみになっています。
けれど、何十年も食した経験がないことも事実なので、不安を感じる人はこれらの食品を避けることができるように表示制度が整えられています。
出典
- 遺伝子組換え食品ホームページ 厚生労働省医薬局食品保健部
- JAS法に基づく食品の表示について
- 6DNA抽出実験で用いる食器洗浄用洗剤は中性のものの方がよいのですか。
- 6この実験の洗剤の役目は「細胞膜構造の破壊」です。細胞とそのまわりとの仕切り、また、細胞中の細胞核(DNA はこの中にある)などの構造はそのまわりとの仕切りのために、一種の油の膜があります。洗剤は水になじむ部分(親水性)と油になじむ部分(親油性)を一緒に持っている物質で、油を水に溶かします。この実験では洗剤で上記の細胞にある膜の構造を壊してDNAを外に出します。
DNA は機械的にも化学的にも、とても壊れやすい物質で、酸性やアルカリ性の液中では壊れる可能性がずっと大きくなります。そこで、抽出液は中性付近にしておくのが望ましいのです。
セッケンも洗剤の一種です。これは溶かすとアルカリ性になります。洗濯用の洗剤や掃除用の洗剤は分解性を高めるためアルカリ性のものが多く、これらを使うとDNA が壊れてよく取り出せない可能性が高いので、中性の物が多い食器用洗剤を使うことにしたのです。これらにも最近は洗浄力を増すために、いろいろな物質を添加しているので、その中にはDNA 構造を壊しやすいものが含まれる可能性があります。そこで、なるべく多くの種類の物質が入っていない安い食器用洗剤が適しています。
洗剤の「種類」や、「濃度」、混ぜてから「放置する時間」などを変えて実験してみると、よい研究課題になると思います。 - 7お酒が強くなってくる(=肝臓の中で分解する速度が速くなる?)ということは、遺伝子レベルでは、何か変化があるのですか。イネの細胞も、冷たい温度に長い時間さらされると、1代の中で耐性を獲得するのでしょうが、それはDNAが変化しているということですか。
- 7環境の変化に対応した反応がそのまま遺伝して子孫に伝わることはありません。
お酒をよく飲んでいるうちに強くなるのは遺伝子レベルの変化ではなく、体の防御反応の一つです。お酒の主成分エタノールは、量が多いと体にとっては毒物の一種なので、元々我々の体に備わっている防御系の一つ、ミクロソームエタノール酸化系(MEOS)とよばれる毒物代謝酵素系の遺伝子のスイッチが入り、酵素の合成が開始され、エタノールを分解する能力が高まります。通常はこの遺伝子のスイッチが入らず、酵素の量は少ないのです(生物は省エネ・システムですから)。この酵素はエタノールをアセトアルデヒドに分解する通常のエタノール代謝系の酵素とは異なり、毒物分解系です(ホームページの記事を参照してください)。植物も動物と同じようにいろいろな防御系をもっており、寒さに対しても、たとえば糖分含量を増やすなど、懸命な努力で体を守る仕組みがあります。寒さに耐えた植物の子孫がその性質をそのまま受け継ぐことにはなりません。
このような変化は、元々存在している遺伝子が働くスイッチが入るか入らないかという変化であって、遺伝子が変わることではありません。
子孫に変化が伝わるのは子孫に伝わるDNAに変化が起きた場合です。高等生物では体が作られる途中の早い段階で、生殖細胞が他の細胞とは別に保存されます。この生殖細胞の遺伝子に何らかの変異が起こると、その変異は次世代に引き継がれる可能性があります。しかし、変異は無目的に乱雑に起こるものであって、冷所におくと耐冷性の変異が起こるということではありません。乱雑に起こる変異の中には、冷所でも生き残りやすい変異も偶然起こる可能性があります。この耐冷性の変異が起こっても、通常の気候では、その個体は単なる変わり者で、全体の中ではその子孫はごくわずかしか残らず、ほとんど無視されるような数です。ところが、冷害のときには、その変わり者だけが生き残りやすく、普通のものが死滅するので、全体の中での数が増えます。そうすると、冷たい気候が原因で、耐冷性のものが生まれたように見えるのです。しかし、寒さに強くても成長が遅いものは、寒さに弱いが成長が早いものより、子孫の数が少ないので、このような場合には、寒冷地でも耐冷性のものが増えず、あまり耐冷性のないものが生き残ります。したがって、寒冷な気候で残るのは耐冷性ということだけで決まる問題でもないのです。よい変異、悪い変異という価値判断は人間の価値判断であり、遺伝子レベルではそのような価値判断はなくでたらめな変異がおこります。ある生物群がある環境で生き残るかどうかということは、その条件で、その生物がシステム全体として、より安定であるかどうかということで決まる現象なのです。
イネの耐冷性のような品種改良には別な問題もあります。イネの耐冷性が上記のように変異でできたとしても耐冷性品種を確立するには、つぎのような遺伝子の組合せの問題があります。耐冷性のような複雑な性質は一つの遺伝子だけでは実現されません。皆さんの子供が、兄弟同士、また親ともいろいろな点で異なるように、同じイネでも、それぞれいろいろな遺伝子をもっています。その中のいくつかの組合せで寒さに強い性質を表すことがあります。たまたま、そのようなイネが見つけられても、その子孫では遺伝子の組合せがまたバラバラになり、耐冷性を示す遺伝子の組合せが、そのまま残るとは限りません。うまくこれらの組み合わさった耐冷性のイネを見つけ出したとき、その子孫を何回も掛け合わせたりして、この遺伝子の組合せを必ずもつようなイネを作ることにより耐冷性の品種ができあがります。このような優れた品種を作る育種という作業は十年以上の長い期間の努力が必要なのです。
現在ではイネのゲノムの塩基配列がほぼ全部わかりました。しかし、このような耐冷性に関係する遺伝子がどれなのかを決めるのはなかなか困難で、このような遺伝子の組合せを探しあてる地道な努力がポストゲノムの研究の一つです。これらを探し当てて、直接遺伝子を組み合わせて耐冷性のイネを作り上げるのが、将来のイネの耐冷性品種の育種の有望な方法になるでしょう。 - 8DNA抽出実験では、ガラス棒でないとDNAは巻き取れないのでしょうか?
大学で生物を学んでいます。私たちの実験では大腸菌のDNAを巻き取るためにガラス棒を使い、他の物ではだめだと言われました。
しかし、このホームページでは割り箸などでよいとあるのはなぜですか?回収できるDNAの量の違いでしょうか? 水中ではガラス棒が少し正に荷電していることを利用して回収すると考えたのですが・・・。
DNAは塩によってマスクされた状態でエタノール中に析出してくるのでしょうか?
また、文献などでDNAにはガラスに吸着しやすい性質がある、それを利用してDNAを回収する、とあったのですが、その場合はDNAの濃度が非常に低いので、まったく違う話になるのでしょうか? - 8(1)DNAの構造と抽出液からのエタノール沈殿の原理
核酸(DNAやRNA)は成分中の2個の糖の間をリン酸が結合しているので、以下のようなリン酸の構造が数多く含まれています。
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O
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O=P-OH
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O
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このリン原子(P)に結合しているOHが水中ではOマイナスイオン(O-)とHプラスイオン(水素イオン、プロトン、H+)に解離します。核酸全体がこのマイナスイオンの荷電をたくさん含み、酸性になっています。水中でH+を放ち、自分がマイナスイオンになる性質の物質を酸と呼ぶのでDNAやRNAは核酸と呼ばれるのです。動植物の染色体中では、DNAは塩基性のタンパク質であるヒストンその他が結合して中和されていますが、DNAを抽出すると水溶液中ではマイナスイオンによりDNA分子同士が反発して集まらないので沈殿し難くなります。NaClを加えるとNaプラスイオン(Na+)が結合して塩(P-ONa)となり、残ったNa+、H+とClマイナスイオン(Cl-)でイオンバランスがとれた状態となります。塩となった核酸分子同士はクーロン力の反発が少なく集まりやすくなり、エタノール中ではDNAの溶解度が小さいので塩(DNAナトリウム塩)となって沈殿するのです。リン酸とNa+との結合は可逆的なので、Na+を十分結合させるために、高濃度のNaClを添加する必要があるのです。
タンパク質もグルタミン酸やアスパラギン酸のようなカルボキシル基をもつアミノ酸によるマイナス電荷、リシンやアルギニン、ヒスチジンなどのアミノ酸のプラス電荷が表面にあり、マイナスが多いと全体として酸性、プラスが多いと全体として塩基性になります。上記のヒストンはこのようなプラス電荷が多い塩基性タンパク質です。卵白に多く含まれるリゾチームという酵素は細菌の細胞表層を支えている構造を破壊するので殺菌性があり、風邪薬に入れられていることがありますが、塩基性タンパク質ですので、Cl-が結合した塩である塩化リゾチーム(リゾチーム塩酸塩)として使われています。
(2)ガラス棒でなくてもまきとれる
ホームページのDNA抽出実験の写真のとおり、ガラス棒でなくても巻き取れます。ここで割り箸か、串を使うことにしたのは、家庭にある道具を使うこと、子供が行っても危険が少ないようにという理由からでガラス棒でもかまいません。(1)で説明したようにDNA分子間の荷電による反発を除いて凝集させるために十分量の塩(この場合、食塩)を加えてあるため、正負のイオンによりマスクされ、ガラス表面とDNAの間ではクーロン力による引力、斥力は働かないので、巻き取りに荷電は関係ありません。
透明の棒の方が見やすいので、家庭で行う場合、百円ショップで売っているプラスティック製のマドラーが使いよいかもしれません。
(3)ガラスの吸着性
ガラスやプラスチックは核酸やタンパク質を吸着する性質があります。しかし、吸着はその表面に核酸やタンパク質分子が一層だけ吸着しますから、吸着量は多くはありません。しかし、微量な核酸やタンパク質の定量をする場合にはこの吸着による減少が問題となるので細心の注意が必要です。細いガラス管のピペットでDNA溶液を出し入れするだけでかなり減少することもあり、定量実験ではとても気を遣います。
一方、肉眼で十分に見られる量は分子が一層吸着するのに比べれば圧倒的に多量で、吸着による結合は無視できます。DNAの沈殿を巻き付けられるのは長い分子同士が毛玉のように絡まっているからで、溶液を棒でかき混ぜた後ではDNAが切断されガラス棒でも巻き取れません。もし吸着によるのであれば、この状態でもDNAが巻き取れるはずですが、巻き取れないのは吸着でなく、DNA分子が短くなり絡み合いがないためであることを示しています。 - 9中国の山野に生えています、薬用植物(でないものかもしれませんが)のエキスを中国で抽出していただき、研究のために、入手することの、中国の国内法との整合性はどうなのでしょうか。
- 禁止されているものと、いないものとがあるのか。
- 少量ならよいのか。
- 条件が付くのか(例えば、有用物質が見つかったときには報告義務があるとか、特許をとってはいけないとか、発表するには許可がいるとか)。
- 9中国からの植物の持ち出しは制限しています。野生のものはほとんど困難です。乾燥した流通品(生薬や食品)はほとんどものが持ち出し可能です。禁止されているものは麻黄と甘草です。これは砂漠化防止のため措置と聞いています。特許の件も中国側の然るべき研究所と共同研究した方がよいと思います。
- 10アケボノソウは薬草ですか?
きのこ狩りに行って千振りと思ってアケボノソウを持ち帰りました。詳しい人に聞きますと千振りでないと言われがっかりです。捨てるのも勿体無いしと思いネットで調べたのですが分かりません。もし、分かれば教えてください。 - 10アケボノソウは薬草としては使われていません。センブリノの仲間ですが苦味がよわいようです。
- 11ゲノムとゲノムコードの違いは何ですか。ゲノムコードの意味は何ですか。」
- 11一言でいうと「ゲノムコード」=「ゲノムDNAにコードされている遺伝子」です。意味がわかりにくく、誤解を招きやすいので、あまり使われていません。
生物を構成する細胞の遺伝情報はDNAという核酸に含まれています(ウイルスだけは細胞がなく、その遺伝情報は、種類によりDNAあるいはRNAに含まれています)。「ゲノム」とはある生物の遺伝情報の1セットのことを指します。細胞には核中の染色体を構成しているDNA以外に、細胞内には動植物ではミトコンドリア、植物では葉緑体もDNAを含み、また、生物によってはプラスミドなどのDNAもあります。ゲノムという場合は、このような核以外のDNAの情報は含まず、核の染色体DNA(細菌など原核生物は染色体という構造はもちませんが、核のDNAをこう呼びます)の遺伝情報で、その生物の基本的遺伝情報を指します。
DNAの塩基配列の中でタンパク質に翻訳される領域を通常、遺伝子といいます(タンパク質に翻訳されずに、DNAから複写されたRNAのままで働くリボソームRNAや転移RNA(高校の「生物」では運搬RNAと呼ぶ)など様々な機能をもつRNAがあるので、このようなRNAに複写される領域も遺伝子と呼ばれますが、ここではタンパク質に翻訳されるものに限定して話します)。タンパク質は20種類のアミノ酸で作られていますが、この種類は塩基が3個連なった配列で規定されており、この塩基配列を遺伝暗号(遺伝コード、genetic code)と呼ぶので、タンパク質に翻訳されるDNAの領域をタンパク質にコードされる領域(DNA中のコード領域など)といいます。ヒトの場合,最近の研究で遺伝子の数は2万から2万5千程度ということがわかったように、ゲノム中で遺伝子としてコードされている領域は限定されています。こうしたゲノム中の遺伝子領域をゲノムコードと呼ぶことがあります。
ミトコンドリアや葉緑体のDNAにもタンパク質にコードされる、いわゆるコード領域がありますが、ミトコンドリアや葉緑体を構成しているタンパク質のかなりのものは染色体DNAにコードされています。これらミトコンドリアや葉緑体のタンパク質の中で染色体DNA中の遺伝子領域をミトコンドリアあるいは葉緑体のゲノムコードと呼ぶことがあります。すなわち、ゲノムは染色体DNAの情報ですから、ミトコンドリアや葉緑体の成分であってもミトコンドリアや葉緑体のDNAにコードされているのではなく、ゲノムにコードされているタンパク質の遺伝子や、その塩基配列という意味です。
ゲームの世界では「ドラゴンドライブ」でドラゴンの強化や新しい性質の付与ができる情報をドラゴンの遺伝子コードとしてゲノムコードと称しているようです。 - 12「DNAを取り出すときにはどうして、食塩やエタノールを使うのでしょうか」
今、私は高校で遺伝の勉強をしているのですが疑問に思ったことがあるので、できたらお返事をいただきたいです。お願いします。
この前、授業で「DNAの抽出」の実験をしたのですが、その実験を行っている途中で、DNAを食塩に溶かすという作業や、エタノールを加えるとDNAが取り出せるといったことがありました。それは、なぜ食塩や、エタノールを使うのでしょうか?何か体の中と共通する働きがあるのでしょうか? また、取り出したDNAを水に入れると、DNAは溶けてしまいました。これも、体の中の働きと何か関連があるのでしょうか? - 12まず、「くらしとバイオプラザ21」のホームページの「バイオ基礎教室:野菜からDNAを抽出してみよう」の最後の解説と「Q&A コーナー:Q8.DNA抽出実験では、ガラス棒でないとDNAは巻き取れないのでしょうか。」の回答をごらんください。
(1) DNAを抽出するということ:
恐らく生命は水中で発生し進化したので、生物を構成している細胞の内外は水で油の膜(脂質二重層)で外界と仕切られていると考えてください。
生体の中にある物質の多くのものは水溶性です。低分子ではブドウ糖(D-グルコース)などの糖や、アミノ酸などは水に溶けます。油脂は水と混じらないので、水に溶けません。油脂の中でアルキル鎖(CとHのみの鎖状部分)が短いものは液体なので油(天ぷら油、サラダ油など)、アルキル鎖の長いものは固体で脂(肉の脂分など)とよびます。
DNAやRNAは核酸と総称され、分子量の大きい、高分子ですが、よく水に溶けます。上記のQ8に簡単な図を示しましたが、リン酸を含むので全体としてマイナスの電荷を帯びています。高等生物ではタンパク質と結合して「染色体」を構成し核(細胞核。細胞の中でさらに油の膜(脂質二重層)で仕切られた部分)にあり、分裂期には顕微鏡で観察できる構造体となっていますが、分裂期以外では核中に分散していわば溶けている状態です。
DNAを抽出するためには、まず、細胞と核を仕切っている膜を壊さなければなりません。
そのために洗剤を加えます。洗剤は油と水を混ぜることにより油汚れを取る性質を持っているので脂質二重層が壊れます。また、洗剤は染色体を構成しているDNAとタンパク質を分離しやすくするのにも役立っています。細胞をつぶし、洗剤を加えることにより、DNAが水溶液として、抽出液中に溶け出してきます。
(2)DNAを集める:
上記のブドウ糖やアミノ酸など水溶性の物質が水に溶けている場合、目に見えません。これを目に見えるようにするには水を蒸発させると、ブドウ糖やアミノ酸の濃度が高まり、水に溶けきれなくなり、最後に固体として析出してきます。ブドウ糖やアミノ酸が溶けにくいアルコールなどの液体(エタノールは水に似ているのでこれらが溶けやすいので、アルキル鎖の長いアルコールなど)を水溶液に加えるとやはり析出沈殿してきます。
同様にDNAの場合も、水によく溶けるのでブドウ糖溶液などと同様、透明な水溶液ですが これにDNAの溶けにくい液体を加えるとブドウ糖などと同様に溶けなくなり沈殿します。
ただし、上に述べたようにDNAは大量のリン酸を含むのでマイナスの電荷同士で反発して、 分子が近よれず沈殿し難いのです。そこで、大量のNaClを加えると、ナトリウムイオンの プラス電荷がリン酸のマイナス電荷と引き合い反発がなくなります。水溶液中ではそれで も溶けた状態ですが、エタノールを加えるとDNAがエタノールに溶けにくいので沈殿します。
上記のことでわかったと思いますが、DNAはもともと水溶性ですから、水に入れればよく溶けます。抽出したDNAを洗浄するにはごく少量の水に溶かし、再びNaClとエタノールを加えて沈殿させます。DNAの沈殿をNaClを加えたエタノールに入れておけば沈殿を保存できます。
(3) 生体中の反応との関係この実験で使ったNaClとエタノールはDNAを沈殿させるための試薬として働いており、電荷と溶解度との一般的物理化学的法則に基づく現象で直接生体の中の現象とは無関係です。
しかし、生物の体の中で起こっていることも基本的には物理化学の法則に基づいて起こっていることで、最近はDNA、タンパク質をはじめ、生体内の物質の働きが細かくわかり、それらが物理や化学の法則で動いているしくみもわかってきました。ですから、これから生物学、その他のバイオの勉強には物理や、化学、数学、コンピューターなどの情報科学の知識や技術が必須になっています。しっかり勉強してください。 - 13日本にはどのぐらいの遺伝子組換え農作物が輸入されているのですか?
私は冬休みの課題で遺伝子組換え食品について調べている大学生です。
遺伝子組換え農作物がどれだけ日本に輸入しているのかを知りたいのですが、色々調べてみてもわかりませんでした。遺伝子組換え農作物(特に大豆)の輸入量を知ることはできますか?また、普通の大豆と、遺伝子組換えをした大豆の値段がどれほど違うのか知りたいので、もしご存知でしたら教えてください。 - 13日本の年間大豆消費量は約520万トンで、約8割が一般大豆(不分別、ほとんどGMO*です)で搾油されます(食用油、飼料、工業用途など)。残りの2割がNon-GMO*食品大豆(大豆加工食品用)です。
相場ですが、シカゴ大豆相場が現在、1ブッシェル(約27kg)、5ドル前半台です。シカゴ大豆相場が世界の大豆相場の基本指標になっており、これが一般大豆の相場です。
Non-GMO大豆は割高で、品種・産地によって価格が変わります。
アメリカ産Non-GMO IOM、アメリカ産バラエティー、国産、中国産、有機栽培などの種類があります。
ちなみに現在、豆腐に使われている大豆の55%はアメリカ産Non-GMO大豆です。
参考サイト:
東京穀物商品取引所 http://www.tge.or.jp/japanese/nonflash.html
農水省のサイト
http://www.maff.go.jp/soshiki/nousan/hatashin/daizu/tisiki/yunyu.html
http://www.maff.go.jp/soshiki/syokuhin/heya/qa/alt/altqa021205.htm
*GMO:遺伝子組換え作物
*Non-GMO:非遺伝子組換え作物 - 14取り出されたものがDNAであることはどうやったら確認できますか?酢酸カーミン溶液などで染色すればよいのですか?
- 14家庭や中学・高校でできる範囲で、この沈殿が核酸であるという証明は困難です。以下の実験により、性質の一部を検証することが出来ます。
(1)DNAが壊れやすい高分子であることの証明
核酸は径が1nmくらいしかない細い鎖状の化合物で塩を含むエタノール中でこれが絡み合って沈殿しています。沈殿を作る際に溶液をかき回さずに慎重に扱うのはDNA分子を壊さないためです。このようにして沈殿を作ると棒に巻き付けることが出来ます。
こうして出来た沈殿をエタノール中でかき回すと、もう棒に巻き付けられなくなります。これはかき回すことによる弱い剪断力(物を切る力)でもDNAが容易に短い断片になってしまうからで、DNAが長い特殊な化合物である証明になります。
(2)DNAが酸であることの証明
DNAは核酸の一種です。核酸は糖をリン酸基がつなげて鎖状につながっている高分子化合物で、リン酸基は水中では解離し、水素をHプラスイオン(水素イオン、プロトン、H+)として水中に離し、リン酸基はマイナスの電荷を持つリン酸イオンになります。こうして核酸全体がこのマイナスイオンの荷電をたくさん含み、酸性になっています。水中でH+を放ち、自分がマイナスイオンになる性質の物質を酸と呼ぶのでDNAやRNAは核酸と呼ばれるのです(Q&AコーナーのQ8を参照してください)。酢酸カーミンは塩基性色素でプラスの電荷を持つので、細胞をこれで染色すると、酸性の物質が染色されます。細胞核中の染色体にはDNAが多く存在するので、赤く染まります。染色体以外の酸性物質も染色されますが、DNAが核中には多量にあるのでよくわかるのです。酢酸カーミンをエタノールに溶かし、この溶液に、上記の実験で棒に巻き取った沈殿を浸すと赤く染まります(水溶液だと沈殿が溶けてしまいます)。対照実験として赤色食用色素を同様にエタノールにとかしたものを用意し、これにDNA沈殿を浸すと染まりません。赤色の食用色素は酸性色素であるためです。同様にメチレンブルー(塩基性色素)を用いると青く染まり、青色の食用色素(酸性色素)では染まりません。この実験からDNAが酸であること、つまり核酸であることがわかります。
(3)DNAには核酸塩基が含まれていること
この実験には紫外部(300nm以下の波長)まで測定可能な分光光度計が必要で、一部の高校などでしか測定できません。DNAとRNAは上記の糖に核酸塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン(RNAでは代わりにウラシル))が含まれています。この化合物は260nmの紫外線を吸収します。そのため、実験で得られた沈殿を水に溶かして希釈し(かなり薄くしないと実験できませんので希釈を重ねた溶液を用意します)、これを石英製か紫外線を通すプラスティック製のキュベット(ガラスは350nmくらいから短波長の光を通しません)に入れて分光光度計で測定します。スペクトルを描くことができる自記分光光度計では240nm付近から300nm位を測定すると260nmにピークを持つ吸収曲線が得られるはずです。自記分光出来ない装置では、この範囲で5nmずつ波長をずらして吸光度を測定して波長と吸光度との関係を図示すれば、同様の吸収曲線が書けます。細胞に強い紫外線があたるとこれをDNAが吸収して壊れます。これが皮膚がんの原因の一つです。 - 15タマネギとレバーではDNAの抽出方法が異なるのはなぜですか?
高校でDNA抽出実験を行いました。玉ねぎとレバーではDNA抽出実験方法が違いました。玉ねぎは、加熱をしなかったのですが、レバーは加熱をしてDNAを取り出しました。(逆にしてやったら失敗しました)なぜ、玉ねぎとレバーではDNAを抽出する方法が違うのですか?教えてください。 - 15食材からDNAを抽出する実験はいろいろなところで行われています。
材料の多くは野菜として、「タマネギ」、「ブロッコリー」など、動物材料として「トリレバ」がよく使われます。後者の場合、加熱処理をするように進められています。
DNAは80度以上くらいになると二重らせんを作っている水素結合が壊れて一本鎖になります。そこで、もとのまま取り出すため、なるべく加熱を避けることが望まれます。しかし、動物材料の場合、加熱処理が行われるのは材料中のタンパク質が野菜に較べてずっと多いため、タンパク質を加熱変性して沈殿させてDNAを取り出しやすくするためです。
野菜のようにタンパク質の量が少ないものはDNAを壊さないように加熱しない方がよく抽出できます。
100グラム中の水と、タンパク質の量(グラム)の比較
材料 水 タンパク質 食肉類 約70 約20 トリレバ 75.7 18.9 タマネギ 89.7 1.0 ブロッコリー 89.0 4.3
- 「食品成分データベース」
- 「五訂増補日本食品標準成分表 」
- 16DNAはなぜ水に溶けやすいのですか?
大学でDNAの抽出実験をしました。そのとき、DNAは水に溶けやすいという事に関しては詳しく知ることができませんでした。
ブドウ糖やアミノ酸の性質に関係しているのでしょうか?それとも、DANがリン酸で負の電荷を帯びているからでしょうか?また、塩基同士の水素結合も何か関係しているのですか? - 16電荷を帯びた物質や親水基とよばれる水酸基などの基を多く含む物質が水に溶 解します。逆にアルキル基をもつ化合物やベンゼン核を有もつ芳香族化合物は水 との親和性がなく溶けません。
DNAやRNAは構成要素であるヌクレオチドのそれぞれにリン酸基があります。中性ではそれら2個の 解離基のうち、約1個が解離して負の電荷を帯び、分子全体では大きな負電荷を持ち、水によく溶けます。負電荷同士は反発してDNAは分子内や分子間で近づけず、細胞中ではヒストンという正電荷をもつタンパク質(動植物の場合)や ポリアミン(細菌の場合)が結合して負電荷を中和しコンパクトに折りたたまれ ています。
DNA抽出の際、食塩を加えるのはナトリウムイオンでリン酸の負電荷を中和しDNA 分子同士が近づきやすいようにしたうえ、エタノールを加えDNAの溶解度の低下、凝集により沈殿させるためです。