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学習会「買い物が変わる!~プロから学ぶ食品表示の見方~」

2025年11月29日、学習会「買い物が変わる!~プロから学ぶ食品表示の見方~」を東海コープ事業連合会本部の会議室とオンラインで開催しました。あわせて50名余の参加がありました。講師はFood Communication Compass 代表 森田満樹さんでした。学習会終了後は、併設されている検査センターの見学会も開かれました。

森田満樹さんはオンライン参加

森田満樹さんはオンライン参加

サテライト会場

サテライト会場

学習会の主な内容

1.食品表示ルール

商品の裏面に一括表示があり、名称、原材料、原産地、添加物、アレルゲン、保存方法、期限表示、表示責任者、栄養成分、分別方法など、様々な情報がある、食品表示は表面だけをみるのではなく、ぜひ裏面を見て、その見方を知って活用してほしい。
一つ事例を見てみると、COOPの製品の一括表示、栄養表示以外のところに任意表示があるが、開封後の商品の取扱いなど消費者への注意喚起の表示が大きなスペースを占めており、親切だと感じている。任意表示にはメーカーの姿勢がみられるところでもある。
食品表示の義務表示は食品表示法で定められている。食品表示法というと古くからある法律のように思われるが、2015年に施行した新しい法律であり、それ以前はJAS法、食品衛生法、健康増進法にまたがって義務表示が定められていた。また、任意表示については虚偽誇大な表示などの不適切な表示や、最近はナンバーワン表示やステマ表示などは景品表示法がカバーしている。このように関連規制も多く、民間の食品表示検定があるくらいに食品表示の制度は複雑で難しい。
また、何でも食品表示の対象というわけではない。表示が免除されるケースとして量り売りや陳列販売などの対面販売がある。また、加工食品でも容器包装がない場合も食品表示の対象外となる。なお、学校のバザーなどでも別な場所で作って包装して売る時は食品表示が必要になるので要注意。

2.注意したい表示

(1)アレルギー表示

特定原材料は8品目あって義務表示である。他に推奨表示20品目。
最近の傾向としては、クルミが特定原材料になるなど、木の実類の項目が増えている。このような変更は全国実態調査による患者数増加の報告に基づく。今後、カシューナッツが義務表示に、ピスタチオが推奨表示に追加される予定。

(2)賞味期限と消費期限
賞味期限は品質の保持が可能な期限で、消費期限は腐敗・変敗などの劣化に伴い安全性を欠く期限。国も力を入れている食品ロス削減では、期限表示が重要な役割を果たしている。たとえば「てまえどり」(手前においてある期限の近い物から購入する)でも期限表示の情報は重要となる。2025年3月に食品期限表の設定のためのガイドラインの見直し検討会取りまとめが消費者庁で公表された。安全係数0.8の目安をなくして食べられる期間を延ばすことなどが盛り込まれている。

(3)原料原産地表示
原材料の中で一番重量の多い原材料について、その産地等を表示する制度で2017年9月に基準改正が行われた。対象原材料が加工食品の場合は、その製造地を書く。例えば、国内で製造したそば粉を使っていると「国内製造」と表示されるが、その原料であるそばの原産地は海外ということもある。また、例外表示として複数の国の原材料を使っているような場合は、「又は表示」「輸入など一括表示」「輸入又は国産の表示」のように複雑になる。

(4)遺伝子組換え表示
2019年の食品表示基準改正で、これまで任意表示だった「遺伝子組換えでない」と表示できるのは、組換えられた遺伝子やそのたんぱく質がPCR検査で検出されないときに厳格化された。分別生産流通をして混入量が5%以下なら、これまでは「遺伝子組換えでない」と表示できたが、表示する場合は「分別生産流通管理済み」等と表示する。 例えば、豆腐の「丸大豆(国産、分別生産流通管理済み)」と書かれているのは、丸大豆が国産でも、同じ工場内で輸入大豆を使っている豆腐を製造していたりして、混入するかもしれないケースを想定している。

(5)添加物の不使用ガイドライン
日本は添加物が多いという事前質問があったが、これは誤解で、海外と数え方が異なる。たとえばクチナシ色素のように日本では認められているが、海外の国によっては使えないものもあるし、逆もある。添加物が気になる場合は、原材料と添加物の間に「/」を入れるなどのルールがあるので、そこを注意してここからが添加物と思って確認するとよい。

3.健康に関する表示

(1)栄養成分表示
栄養成分の義務表示は5項目。気を付けてほしいのは食塩相当量。食事摂取基準における食塩の1日の目標量は男性は7.5g未満、女性は6.5g未満だが、実際は男性で11gくらい摂っている。インスタント麺は麺そのものに塩分が含まれ、麺とスープで5.6g。食パンにも0.7g含まれる。このような「隠れ食塩」が多いので要注意!高齢者はエネルギー、たんぱく質に気を付けてほしい。脂質を制限している人は脂質量を見て食品を選んでほしい。

(2)健康食品
いわゆる健康食品には、保健機能食品とそれ以外の健康食品がある。保健機能食品のうち、機能性表示食品制度は2015年に制定された。機能性表示食品は届出によるので、有効性の確認は事業者の責任で届出され消費者庁は特定保健用食品(トクホ)のような審査は行わない。保健機能食品は栄養機能食品、特定保健用食品(トクホ)、機能性表示食品の3つがあり、その違いを理解して、表示を見てこれらを見分けられるようになってほしい。しかし、基本は食事のバランス!特定のものだけを食べないこと!「食べもの情報に食い物にされない」ようにしてください。

質疑応答

  • アイスクリームは冷凍なのに賞味期限があるようだが。
    アイスクリームは期限表示が義務づけられていない。ただし、問い合わせがあるために任意で賞味期限を表示しているメーカーがある。一方、冷凍食品は期限表示が定められており、冷凍でも期限表示が定められているものもある。
  • 原料原産地でそば粉(国内製造)というのがあるが、消費者にとって意味はあるのか?
    国内製造の表示については同感で、私も同じような発言をしてきた。加工食品の原料まで遡って表示するとなると、海外の原料原産地がわからないものや、ブレンドされていたりして不明のものもある。このため、産地まで遡らずに製造地表示が採用されたことになる。制度ができて7年目で見直ししたが、生鮮まで全部書いて厳格化すべきという意見と、製造地表示をやめるという意見の両極端で合意に至らず、結局、今の製造地表示を継続することになった。
  • 「国産又は輸入」という表示は意味が無いように思うが、なぜこのような表示になっているか?
    世界中という意味になってしまうが、多くの国から輸入している場合にすべての国を表示するにはスペースの問題等もあるので、落としどころとして、「国産又は輸入」となった。原産地表示については、消費者の認知度も低く、「国内製造」を国産だと誤認している人もいる。
  • 商品の数や重量によらず、栄養成分表示が100gあたりになっていて、食べる人にとってはわかりにくいと思う。
    栄養成分表示を100gにしているのは事業者の考え方による。大手はビスケット1枚当たりなどとしている。現在検討中の日本版包装前面栄養成分表示では、包装の前面の見やすいところに栄養成分を表示するようになるが、1食あたりで表示することが勧められている。
  • 遺伝子組換え5%以下含有の「分別生産流通管理済み」などの書き方が統一されておらず、多様すぎるのではないか。
    書き方が多様でわかりにくく、消費者庁がいくつかの例を提示しているが、「遺伝子組換え混入防止」など、遺伝子組換えが危ないので混入防止しているように見えるためよくないとも思う。任意表示なので、遺伝子組換えに関する表示をやめた事業者もある。
  • 目が不自由な方に向けた商品開発はあるか。牛乳には触ってわかる表示がある。
    デジタルを活用する動きがあり、QRコードをかざすと小さい字が大きくなったり、食品表示を読み上げたりできるらしいので、そのような工夫が進むと期待している。しかし、QRコードがどこにあるかわからない、という問題もあるので、QRコードの場所が触ってわかるようなものにできないか、提言してみる。
  • サプリの飲み合わせは?
    飲み合わせによる複合作用はあると思う。薬の効果にも影響するので、サプリを嫌う医師も多い。もし薬も飲んでいるのであれば、医師に相談してほしい。

検査センター見学会

検査センターは微生物検査の部屋(菌の増殖について調べたり、消費・賞味期限を決めるための試験をしたりする)、化学試験の部屋(農薬、遺伝子組換え、食品添加物、アレルゲンなどを調べる)、分析の部屋(含まれる物質や放射性物質について調べる)から成っていました。それぞれの検査室の前には見学者用のクイズや体験機器が展示されており、大人も子どもも楽しみながら、食品の検査について学ぶことができます。最後のコーナーでは、サンプルの食物を使って献立を考える食育のコーナーもありました。
2011年の東日本大震災の時、東海コープ事業連合では組合員に安全・安心な食物を確保するだけでなく、被災地の生産物を守るために分析機器を購入したそうです。震災後、春先の小さい桃の放射性物質を測定して基準値を下回っていることを確認し、収穫後にも基準値を下回っていることを確認して販売したところ、産地を応援するメッセージがたくさん寄せられました。中でも、つわりで食欲のなかった妊婦さんが福島の桃なら食べられたというメッセージは、産地にも伝えられ、生産者は感激したということです。物だけでなく、人のつながり、絆を感じたエピソードでした。

手洗い効果を調べる実験

手洗い効果を調べる実験

食育コーナー

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