「デジタル技術の進展とフードサービス分野における食品表示など今後の情報提供の在り方」
2026年1月30日 日本フードサービス協会 研究部会「デジタル技術の進展とフードサービス分野における食品表示など今後の情報提供の在り方」が行われました。
お話は宮城大学名誉教授 池戸重信さんでした。
池戸重信さん
主な内容
1.食品表示制度におけるデジタルツール活用検討の経緯と位置づけ
フードサービスにおける情報提供は重要なサービスの一つ。食品表示法第3条「安全で自主的かつ合理的な選択の機会が確保され、必要な情報提供は消費者の権利の尊重」にも書かれており、これは消費者基本法と重なる。
食品表示という情報提供は食品提供サイドと消費者をつなぐ信頼の絆といえる。
表示の基本は、消費者が知りたいこと、消費者に知ってもらいたいことをわかりやすく伝えること(視認性と理解向上)。中食・外食はその場で説明できることもあり、食品表示法の対象外になっている部分もある。
デジタル化においても、「わかりやすい」を基本に考えていくべき。
食品表示法第1条(目的)に(1)食品摂取における安全性確保、(2)消費者の自主的、合理的な商品選択に資するとなっている。中でも最も重要な表示は、安全に関わる、アレルゲン、保存方法、消費期限の3つ。
2.表示の歴史
戦後の衛生状態の悪い状況から、食品衛生法、JAS法、健康増進法が始まった。
昭和43年消費者保護基本法ができた。
生活が豊かになるにつれて消費者は情報も求めるようになり表示事項は増えていった。
平成16年、消費者基本法ができて、消費者は自立し、権利は守られるべきとされた。
平成25年、食品表示法(消費者庁)ができて3つの法律が一元化された。これを機に栄養成分義務表示、機能性表示食品制度が盛り込まれた。
食品表示は長く検討され、食品表示一元化検討会が行われてきた。検討が始まった第1ステージ(2011年から)、食品表示法が公布された第2ステージ(2013年から)、食品表示基準、Q&A、ガイドラインが行使された第3ステージ(2015年から)、第4期消費者基本計画(2020-2024年度)が始まった第4ステージと分けて考えられる。今は第5期消費者基本計画(2025-2030年度)が始まった第5ステージにある。
3.消費者の食品表示に関する参考度・認知度・理解度・不満度
参考度:期限、原材料などを参考にする消費者は多いが、事業者は期限、栄養成分、アレルゲンを見てもらいたい。
認知度:食品表示の認知度は高いが、だから正確に理解されている(理解度が高い)とは限らない。
不満度:表示の字が小さい、表示事項が多すぎて見にくい、見つけにくい場所に書いてあるなどの意見が、不満の半分くらいを占めている。
消費者がよく見るのは輸入国、原料・原産地表示、食品添加物、遺伝子組換えなど安全性に関係のない事項であり、これらを危ないと思っている人が多いことがわかる。
4.「わかりやすい」とはどういうことか
「わかりやすさ」は法的に定義しにくい。
たとえば「ドットレシオカウンター」では字が多い紙面や画面からうける圧迫感を数値化する。18-19%に達すると読みたくなくなるという。
アイトラッカーで、どこを何秒間見たか視線の動きを調べると、裏面の左上をよく見ることがわかった。デジタルツールにおいてはピクトグラムの活用も有効。
消費者は大事な情報がまとまって書かれていることを求めている。わかりやすさの定義は難しいが、わかりやすくしようとせず、わかりにくい所からつぶしていくのがいいのではないか。
5.食品表示懇談会の検討内容
CODEX委員会食品表示部会において「技術革新を利用した食品情報の提供に関するガイドライン」策定に向けた議論が進行中。
日本政府としてもCODEX規格との整合性に対応しながら「合理的でシンプルでわかりやすい食品表示制度の在り方について順次議論していく。食品表示懇談会では、個別品目ごとのルール(JASやJISは5年ごとに見直ししている)から検討を始め、表示事項の優先順位、WEB上の情報提供と容器包装上の表示の組み合わせが重要だ」という報告書を公開した。
6.今後のデジタルツール活用の方向性
容器包装の表示に変えて代替的な手段によって情報提供を充実させることとした場合の議論を進めていく必要がある。デジタルツールのメリット、デメリットは消費者と事業者にそれぞれあるだろう。
たとえば、コーデックスのガイドライン(2024年)では、
- デジタル情報は代替可能か
- インフラと一般の人がアクセスできることが前提
- 健康・安全に関わる部分はデジタルのみならず包装容器にも示すべき
としている。
7.消費者のリテラシー醸成
食品表示は食生活に必要。情報をデジタル化でわかりやすくするのは消費者の正しい理解のために重要。
食育基本法とは重なる部分が多く、事業者にも食育を進める責務がある。
「健全な」食生活は健康・栄養、食習慣、食文化、環境、安全性等を含む幅広い概念で、「健康な」食生活と同じではない。
CODEXテクノロジーガイドラインと整合性をとりながら、分かりやすい表示のためのガイドブック作成が有効だろう。
デジタル化では、中小企業も多い食品事業者の負担も考えなければならない。
また、トレーサビリティ情報ともリンクさせていくべき。
第5期消費者基本計画では、デジタル技術の飛躍が5本柱の一つとなっている。65歳以上のモバイル保有率74%、インターネット利用率61%、SNSの利用は一般化している。インターネット通販のトラブルは相談件数90.9万件のうちの3割を占めており、デジタルリテラシー醸成が不可欠であることを改めて感じている。
