「日本と世界の遺伝子組換え作物の現状と将来」
2026年2月25日、食の信頼向上をめざす会主催ZOOM情報交換会「日本と世界の遺伝子組換え作物の現状と将来」が開かれました。唐木英明代表の司会の下、くらしとバイオプラザ21 佐々がお話しさせて頂きました。研究者、行政、生協、教員など50余名が参加しました。
唐木代表、中村事務局長とご一緒に
主な内容
国内の遺伝子組換えの状況
現在、開放系での栽培が承認されているのが11作物210系統もある。2025年度、試験栽培を行ったのは農研機構と筑波大学だけで、外資バイオ企業によるものは行なわれなかった。商業栽培は青いバラと青いコチョウランだけ。遺伝子組換えカイコの光る糸が2024年から群馬県蚕糸技術センターで販売されている。トウモロコシ、ダイズ、ナタネ、綿実は大量に輸入されており、ナタネ以外は9割以上が組換え、ナタネは6割弱と推定されている。すなわち、大量の遺伝子組み換え作物を消費している。遺伝子組換え米として期待されているスギ花粉米、ムコライス(コレラワクチン)はともに実用化には至っていない。
国内のゲノム編集の状況
国内外で実用化されているゲノム編集食品は、自然突然変異と区別がつかない欠失型ばかり。自然突然変異と区別がつかないので、表示義務対象にならない。しかし、現在、サナテックライフサイエンス(GABA高蓄積トマト)、リージョナルフィッシュ(肉厚のマダイ、成長の早いトラフグとヒラメ)は積極的に表示しており、消費者の商品選択に資する表示は行なわれていることになる。
海外の遺伝子組換えの状況
遺伝子組換え作物は1996年から実用化された。2011年からは先進国(アメリカとカナダ)の遺伝子組換え作物の栽培面積が発展途上国のそれを上回り、今に至る。例えば、遺伝子組換え害虫抵抗性ナスがバングラディッシュで栽培され、生産者にメリットをもたらして支持されている。かつて、遺伝子組換え作物は先進国だけに利益をもたらすと考えられていたが、今はそうでないことが発展途上国における栽培から知られている。
海外のゲノム編集の状況
海外のゲノム編集作物で、1株当たりの芋の数が多いジャガイモ、モチモチしたトウモロコシが日本で届出されている。辛くないカラシナ、種のないベリーなどが実用化されているというが、地域で消費されてしまっているので日本には輸入されていない。
アルゼンチン、ブラジル、コロンビア、アメリカでは、ゲノム編集を使った家畜の研究・開発が進んでいる。
消費者庁では2025年9月、ジーナス社(英国)が開発したウイルス抵抗性を持つゲノム編集ブタの議論が始まった。
消費者の意識
食品安全委員会の食品安全モニターアンケートによると、遺伝子組換え食品に対して「とても不安を感じる」「ある程度不安を感じる」と回答した人は34.9%。アンケートが始まった2004年には75.2%だったのが、2019年にがくっと減って、今日まで落ち着いている。不安を感じるものとして遺伝子組換えが上位5位に入ったのは、平成21年度の調査が最後。消費者は遺伝子組換え食品に対して、アンケートで問われなければあまり気にしていないのかもしれない。
最新の調査では、バイテク情報普及会が2025年に20~50代 男女2,000名に対して、遺伝子組換え食品に関するアンケートを行っている。食品購入時の関心事において遺伝子組換え食品は10位、0.4%で、あまり気にしていないようだ。
ゲノム編集食品は実用化して数年だが、食品安全委員会のアンケートでは、「とても不安を感じる」「ある程度不安を感じる」と回答した人は37.1%で、ソフトランディングと見ていいのではないか。
表示
食品表示法が策定され、17年ぶりに遺伝子組換え食品の表示の見直しが行われ、2023年度から、任意表示が改訂された。消費者からはすべての食品に表示をしてほしいという要望があったが、義務表示対象食品の拡大は行なわれなかった。任意表示である「不使用表示」が見直され、不検出の時以外は「遺伝子組換えでない」とは表示できなくなった。「分別生産流通管理済み」として5%以下の混入の可能性を述べる表示をする食品事業者と、遺伝子組換えに関する表示をやめた食品事業者がいる。
反対派の動き
遺伝子組換え食品に反対していたグループの活動は続いている。2025年6月、日本消費者連盟はゲノム編集食品への厳格な規制と表示義務化を求める特別決議を発表した。
私たちの取組
2025年12月、ゲノム編集食品を使ったランチ会を計画し、研究・開発者、メディア、生協など40名が参加した。料理もおいしく、多様なステークホルダーによる意見交換が行われて、成功だったと思っている。遺伝子組換えのときは、こういうコミュニケーションができなかった。
また、私たち、くらしとバイオプラザ21では、大阪学院大学 田中豊氏のご助言のもと、「リスク認知」「ベネフィット認知」「信頼」「生命倫理観」「不安」「怒り」「個人的受容」「社会的受容」について8つの質問をつくって、リスクコミュニケーションの前後で回答を比較・分析している。こうすることで、リスクコミュニケーションの評価を行い、改善に役立てている。
